マルコス vs ドゥテルテ…フィリピン中間選挙の分析
フィリピンで実施された中間選挙は、マルコス大統領とドゥテルテ副大統領に対する国民の評価を測る機会であり、2028年の大統領選挙を見据えた前哨戦として関心を集めました。野党の勢力が持ち直し、さらに無所属の候補者も躍進するなど、国内の政治情勢に変化の兆しが見て取れます。
上院の獲得議席を見ると、ドゥテルテ派が5議席(全体の42%)、マルコス派が6議席(全体の50%)と互角の戦いでした。一方、下院では、マルコス大統領が率いるラカスCMD党が引き続き多数派の地位を維持しています。
今回のフィリピン中間選挙は、長年にわたり影響力を持ってきたドゥテルテ一族にとって、試練の局面になるとの見方が強まっていました。実際、元大統領のロドリゴ・ドゥテルテ氏は、2024年3月に国際刑事裁判所(ICC)によって人道に対する罪で逮捕され、オランダのハーグで拘束されています。また、副大統領を務め、一族の事実上の後継者と目される娘のサラ・ドゥテルテ氏も、2月に汚職や現職大統領への殺害を示唆する発言などの疑いで下院から弾劾訴追され、年内に上院での裁判を控えています。
しかし、5月12日に投開票が行われた選挙では、ドゥテルテ一族の勢力が予想に反して強まる結果となりました。記録的な猛暑のなか、多くの有権者が投票所に足を運びました。ドゥテルテ一族の牙城であるダバオ市では、ロドリゴ・ドゥテルテ氏自身が市長に、その末息子であるセバスチャン氏が副市長にそれぞれ当選しました。ロドリゴ氏が現在拘束されている状況にあるため、ダバオ市の実際の市政運営は主にセバスチャン氏が担うことになるとみられています。
加えて、上院選挙ではドゥテルテ氏の側近であるクリストファー・ゴー氏や、麻薬戦争時に国家警察長官を務めたロナルド・デラ・ロサ氏が上位当選を果たしました。また、元下院議員で、サラ氏の弾劾に反対の姿勢を示していたロダンテ・マルコレタ氏も上院議員に当選しました。これらの選挙結果を受け、一部の有権者や専門家からは、ドゥテルテ派の勢いが復活しているとの指摘が出ています。
選挙後、サラ副大統領は声明を発表し、「これは終わりではなく、新たな始まりだ」と述べ、自身と自身の支持勢力を現政府に対する建設的な野党として位置づけました。マルコス政権は、物価高騰への対策不足や腐敗問題への対応、さらにはドゥテルテ派との対立などが国民の支持率低下を招いており、今後の政権運営には不安要素が残る状況です。
一方で、ロドリゴ・ドゥテルテ氏のICCによる逮捕は、麻薬戦争の被害者遺族にとっては、正義実現に向けた最初の一歩と受け止められています。人権団体の報告によれば、彼の指揮した麻薬戦争では3万人以上が命を落としており、多くの遺族が事件の真相究明と責任者の追及を強く求めてきました。しかし、国内では、その厳しい治安対策がある程度「効果的」であったと評価され、一定の国民からの支持を得ていたこともまた事実です。
今後、フィリピン政治において最も注目される舞台は、6月に再開される上院での審議です。中でもサラ副大統領に対する弾劾裁判が最大の焦点となります。上院で3分の2以上の賛成票が得られれば、彼女は有罪と判断され、公職から追放される可能性があります。しかしながら、サラ氏は2028年の大統領選挙において有力な候補者の一人と見なされています。
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