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新型コロナの打撃から立ち直りを見せる外食産業が、今「攻めの再編」に踏み出している。2025年1~3月期のM&A件数は前年をわずかに下回ったものの、依然として高水準を維持。景気回復を背景に資金力を取り戻した買い手の動きが活発化する一方、トランプ米政権の関税政策が先行きに不透明感をもたらしている。世界経済の波に揺られながらも、飲食業界の再編は次のフェーズへと進みつつある。

2025年1~3月の「飲食業界M&A件数」

2025年1~3月期の飲食業界のM&A件数は16件と前年同期比で2件(11.1%)減少した。新型コロナウイルスの感染拡大前の19年(101件)以来年、5年ぶりの高水準となった前年の1~3月期に比べると微減だったものの、高い水準が続いている。

 

コロナ禍後の景気回復に伴い、買い手である同業他社やファンドの業績が回復し、潤沢な買収資金を確保できていることが背景にある。一方で1月に発足したトランプ米政権による関税政策が世界経済を混乱させていることが、日本企業のM&Aにも影を落としている。

飲食業界、M&Aニーズ引き続き高く

飲食業界のM&Aを仲介するM&Aプロパティーズ(東京・新宿)が、全上場企業に義務づけられた適時開示情報などから集計した。飲食を伴う店舗型ビジネスを飲食業界と定義し、同業界のM&A件数を計算した。

 

M&A件数は、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」を受けた景気回復を背景に買い手の資金力が増したことから、19年には101件と過去最多に達していた。ところが、20年に新型コロナウイルスの感染が拡大したことから、人が集まって食事や飲酒などを楽しむ店舗型ビジネスの経営は大きな打撃を受けた。M&A件数も2ピーク時から4割減少していた。コロナ禍が収まったこともあり、24年のM&A件数は85件と23年比で44%増え、5年ぶりの高水準になった。

 

25年は19年の過去最高水準にどこまで迫れるかが焦点となっており、1~3月期は前年同期比で微減ながら高い水準は維持した格好だ。1~3月期は、事業の「選択と集中」で生産性を向上させる「戦略的売却型」が68%(11件)と大半を占めた。M&Aプロパティーズの中村幸司社長は「景気の先行きが読みづらい中ではあるものの、25年も飲食業界のM&Aに対するニーズは引き続き高い」と分析している。

トランプ関税、日銀の金融政策を注視

今後のM&Aの動きで気になるのは、トランプ新政権の関税政策の行方だ。中村氏は「トランプ政権は複数の関税措置を実施したが、政策の内容は二転三転し、先行きに不透明感が出ている。国内・海外の景気と密接に関わるM&Aにおいても、飲食業を含めてネガティブな影響は避けられない」と指摘する。一方で「今後の景気に対する不透明感から、リスク回避のために駆け込みでM&Aを成立させる動きも考えられる」と話す。

 

トランプ関税などを受けて、日銀は5月1日に開いた金融政策決定会合で、2会合連続で政策金利を0.5%に据え置いた。会合結果とあわせて公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」でも、実質国内総生産(GDP)成長率の予測を前回1月時点から引き下げた。中村氏は金融引き締めに慎重な日銀の姿勢について「今年度のM&A実行を後押しする要素だ」と指摘。「今後の経済動向を注視する必要はあるが、少なくとも現時点では、M&A件数が大幅に減少するような事態には陥らない」と予測している。

 

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※本連載は、ジャーナリスト・日高広太郎氏編集協力のもと作成しております。

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