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外食業界でM&Aが再び活発化しています。2024年の件数は前年比44%増の85件と5年ぶりの高水準に達し、1,000億円超の大型買収も登場。コロナ禍を経て業績が回復し、インバウンドや円安を追い風に国内外の資金が集まりつつあります。本記事では、飲食業界のM&Aを仲介するM&Aプロパティーズが、適時開示情報などを基に集計した調査結果を詳しく解説します。再編が進む飲食業界の今を、具体的な事例とともに見ていきましょう。

再編進む外食業界、M&A件数は5年ぶりの高水準

2024年の同業界のM&A件数は85件と23年比で44%増え、新型コロナウイルスの感染拡大前の19年(101件)以来、5年ぶりの高水準となった。このうち、取引総額が最も多かったのは、米カーライル・グループが日本KFCホールディングスの完全子会社化に向けたTOB(株式公開買い付け)で1346億円に達した。

 

飲食業界のM&Aを仲介するM&Aプロパティーズ(東京・新宿)によると、これは飲食業界で実施された過去最高額に当たる。日銀の金融緩和的な政策が続いているほか、新型コロナウイルスの感染拡大が抑制されたことからM&Aの取引額が大きくなっているとみられる。

買い手の資金力高まり、海外ファンドも日本に注目

M&Aプロパティーズが、全上場企業に義務づけられた適時開示情報などから、飲食業界のM&A取引総額や件数を集計した。同社は飲食業界の定義を店舗型ビジネスに限っている。

 

政府は23年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の分類を季節性インフルエンザと同等の5類に引き下げ、コロナ禍は出口を迎えた。これに加えて景気回復やインバウンド(訪日外国人)需要を背景に飲食業の業績も急回復。日銀の金融緩和的な政策は続いており、買い手の資金力も高まっている。

 

企業統治改革で日本経済が復活しつつあることや、緩やかなインフレと賃金上昇などで日本の成長に好都合な環境となっている。円相場が下落していることもあり、海外のファンドなどにとっては企業を買収しやすい状況でもある。

すかいらーくHDによる資さん買収額は200億円超

2024年の飲食業界のM&A取引総額ランキング

 

24年の飲食業界のM&Aで最も取引総額が多かったのは米投資ファンドのカーライル・グループによる「ケンタッキーフライドチキン」を運営する日本KFCホールディングスの買収。買収額は1346億円と2位のすかいらーくホールディングスによる資(すけ)さんうどんを展開する「資さん(北九州市)」の買収額(240億円)の5倍超に達した。

 

カーライルは外食・食品・コンシューマー分野への豊富な投資実績を踏まえて、日本KFCグループのブランド、実績、成長性を高く評価。同社は買収後、①積極的な出店戦略の実行、②メニューの多様化・チャネル拡大による店舗当たり売上の成長加速、③デジタルの強化に向けた戦略的投資、といった施策に取り組むとしている。すかいらーくホールディングス(HD)傘下のうどんチェーン「資(すけ)さんうどん」は今年2月に東京1号店となる店舗を東京・両国で開業。順調なスタートを切った。 

 

取引総額の第3位は、外食店を展開するサンマルクホールディングス(HD)によるジーホールディングス(GHD、東京・中央)の子会社化。取得額は112億円。GHD子会社が展開する牛カツ定食「京都勝牛」ブランドなどを傘下に入れ、訪日客の取り込みや海外進出の強化につなげる。同社は牛カツ専門店を傘下に持つB級グルメ研究所ホールディングス(東京・渋谷)など2社も子会社化する。2社の全株式を105億円で取得する。

 

外食業界では、回復する業績とインバウンド需要を追い風に、国内外の資金が活発に動き始めている。円安や企業統治改革といった構造的な変化も重なり、今後も大型M&Aの動きが続く可能性は高そうだ。海外ファンドの参入がさらなる競争と変革を呼び込む中、飲食業界の再編は新たな局面を迎えている。

 

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※本連載は、ジャーナリスト・日高広太郎氏編集協力のもと作成しております。

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