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2025年1~6月期の飲食業界のM&A件数は37件と前年同期比微減だったものの、コロナウイルス感染拡大後の最高水準を維持した。種類別でみると、最も多かったのは「戦略的売却型」のM&Aの数で22件と全体の約6割を占めた。前年同期と同じ数だった。これは統計を取り始めた19年以降で最も高い割合となった。新型コロナウイルスの悪影響が薄れたことを受けて飲食業界を取り巻く経済環境が変化し、事業ポートフォリオの整理を目指したM&Aが増えている。もっとも、トランプ米政権の高関税政策に伴う通商摩擦は懸念材料。世界経済の先行きには不透明感が残り、飲食業のM&Aの動向にも影響を及ぼす可能性がある。

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本業以外の事業を売却して利益率の向上へ

飲食業界のM&Aを仲介するM&Aプロパティーズ(東京・新宿)が、「飲食を伴う店舗型ビジネス」を飲食業界と定義し、全上場企業の適時開示情報などから同業界のM&A件数を集計した。

 

同社は飲食業界のM&Aを5つに分類している。そのうち①「戦略的売却型」は業態整理による売却代金を注力する事業に投入し、経営資源を集中することを目的にするM&A。②「事業承継型」は後継者不在の問題を解決することを目的とし、事業継続をすることができる。③「再生型」は第三者が協力して不採算の事業・会社を再生することを目的とする。④「ファンド売却型」は投資ファンドに売却するもの。⑤「資本業務提携、経営統合型」は事業会社同士の相乗効果による成長拡大を目的とする。

 

25年1~6月期に最も多かったのが「戦略的売却型」のM&Aで全体の59.5%を占めた。前年同期と同じ22件と数でも19年以降で最多だった。コロナ禍の影響が薄れて個人の外食や企業の会食が増加したほか、日銀の超低金利を背景に買い手の手元資金も潤沢になっている。景気回復が続くなか、自社の強みをいかして成長を加速させるために本業以外の事業や不採算事業を売却するケースが増えている。上場会社の場合、利益率向上を促す効果があるため、市場関係者から評価されることも少なくない。

 

※著者作成
【図表】種類別の飲食業界M&A件数 ※著者作成

 

戦略的売却型と事業承継型を合わせて7割に

次に多かったのが事業承継型のM&Aだ。前年同期比11.1%増の10件と全体の27%を占めた。経営者の高齢化が進み、将来の経営や事業継続への不安から企業を売却する動きは根強い。経営者の平均年齢はなお上昇すると見られ、今後も事業承継型M&Aは堅調に推移するとみられる。戦略的売却型と事業承継型を合わせると約7割に達し、飲食業のM&Aはこの2つに集中しつつある。

 

3番目に多かったのが資本業務提携・経営統合型で3件と前年同期と同じ数だった。他社との連携を通じて競争力を強化しようとする企業も少なくない。ファンド売却型のM&Aは前年同期比60%減の2件にとどまった。不採算の事業・会社の再生を図る再生型のM&Aは前年同期に続いて0件だった。

 

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※本連載は、ジャーナリスト・日高広太郎氏編集協力のもと作成しております。

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