年金を繰下げしていたが…「早くもらっておいた方がよかった」
年金を繰り下げると年金が増える。長寿時代において、これは大きな魅力です。地方の小さな企業で働き65歳でリタイアした神山さん(68歳・仮名)も、そう思っていました。
神山さんの年金額は65歳からの受け取りだと月12万円。転職を数回していたこともあり、60歳時の退職金は500万円ほどでした。それの残りとパートで働く妻と一緒に貯めた分と合わせて、貯蓄は1,300万円ほどです。
妻の年金と自分の年金を合わせると、月20万円。アパートの家賃や食費、水道光熱費だけでも15万円ほど。もちろん、その他にも出費はあります。65歳ですぐに隠居とは考えておらず、働いて収入を得ようと考えていました。そんな時に知ったのが、年金の繰下げです。
「働いて収入があるうちは、年金を繰下げておいたほうが後々楽になると思ったんです。5年待つだけで年金は17万円。月5万円も増えるんですからお得じゃないですか」
こうして神山さんは自分の年金を70歳まで繰り下げることを決め、65歳で年金請求書を出さずに、働いて収入を得ることにしました。選んだ仕事は大型ショッピングモールの警備員。週5日勤務で月15万円ほどの収入を得ることができました。
しかし、そんな神山さんに思わぬ事態が。体調に異変を感じ病院に行くと、大腸がんが発覚したのです。手術をしたものの、後遺症もありそれまでの仕事を継続するのは難しくなったといいます。
「いや私、健康だけには自信があったんですよ。父も母も90歳過ぎても元気で、頑丈な家系だなっていつも笑っていたんですが、まさかね。それで、年金の繰下げもやめて、老齢請求書を出して年金を受け取ることにしたんですよ」
老後は長く続くと思っていたと言いますが、今は、まったく逆になったという神山さん。
「病気をしたら気も弱くなったんですかね、80代まで生きる自信はほとんどゼロ。結果論ですが、むしろ早くもらっておきたかった。病気になって見える景色が変わったというか、元気なうちにもっといろんなことをしておけばよかったなと思ってね。人生何があるか分かりませんね」
繰下げをしても最長5年間遡って受け取ること(遡り請求)が可能ですので、取り返しがつかないという事態になることはありません。ですが、もらわなかった時間そのものを取り戻すことはできません。
「早く年金を受け取って、お金を有効活用できていたら」……神山さんのように、考えが変わる可能性もあるかもしれません。繰下げ、繰上げの選択については、メリット・デメリットをしっかり把握したうえで検討するとよいでしょう。
注目のセミナー情報
【事業投資】1月13日(火)開催
トップ経営者が実践する節税方法を公開!
「即時償却による節税」×「想定利回り9.6%以上」×「手間なし」
無人運営コワーキングスペース「マイクロFCオーナー制度」の全貌
【国内不動産】1月17日(土)開催
建築会社だから実現する安定利回り6%・短期売却で30%超のリターン
東京23区で始める「土地から新築RC一棟投資」実践法
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
