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日本の戸籍に載らない子どもの存在
なぜこのような事態が生じたのか。順を追って説明しよう。韓国では、2008年に施行された「家族関係の登録等に関する法律」に基づき、日本の戸籍抄本(個人事項証明書)に相当する5種類の証明書を発行している。
この制度が始まる前は、日本の戸籍制度に類似した戸籍謄本が発行されていた。ところが、現在の制度に移行する際に、すでに亡くなっていた人や外国籍に帰化するなどして除籍になった人は、新しい証明書制度の対象になっていない。
被相続人の太一さんは、現在の証明書制度になるずっと昔に日本国籍を取得していたため本来であれば、この証明書がでるはずがない。したがって、現在の証明書ではなく、制度廃止で閉鎖されてしまった除籍謄本しか取得できないはずだが、太一さんは日本に帰化をした際、国籍喪失の申告をしていなかったと思われる。
そのため、韓国側には帰化前の太一さんの名前の人物が生きている形で記録が残っていたのである。しかも、家族欄に大輔さんらが知らない人物の氏名が記載されているというおまけつきで。「なぜ生前に教えてくれなかったのか」「父の過去になにがあったのか」さまざまな疑問が大輔さんの頭をよぎる。
国際結婚をしたカップルでなければあまり知られていないことがある。日本国内で婚姻届を提出したとしても日本人の戸籍には婚姻の事実が記載されるが、外国人の配偶者の本国には、特に通知が行くわけではないのだ。外国人の配偶者が日本人と結婚したとしても、自分の国で婚姻に関する手続きをしていなければ、その国の政府としては外国人と婚姻したことを知る方法がなく、既婚者と判断する材料がない。
そのため、日本人となった太一さんではなく、韓国人として別人と婚姻し、韓国人同士の子どもとして、出生届が出されていたものと推察される。
このケースでは、戸籍調査の結果、外国にいる子どもの存在が判明したことから、あらためて韓国内の所在を調査し遺産分割協議のための連絡が必要となったという。
