自己流では通用しない…翔太さんに立ちはだかった壁
翔太さんはまず、地域の観光ボランティアガイドとして活動を開始。地元の史跡や名所をめぐる散策ツアーを月に2~3回行った。インバウンドで外国人旅行客が多く、英語を交えて案内を行うことも少なくなかった。
しかし最初のうちは、ガイドとしての力量不足を痛感する日々が続いた。参加者から「説明が長すぎる」「情報がマニアックすぎてわかりづらい」といったフィードバックを受けて落ち込む日々。
また、地域の観光協会から依頼を受けて、有料ツアーのガイドを務めることもあった。しかし、慣れない集金業務や予約管理に手間取り、なかなか利益が出ない。
親戚の言葉を受けて「ゆくゆくは観光ガイドを仕事にしたい」と考えていた翔太さんは自信を失い始めた。
有料ツアーのガイドは、特に法人・行政案件になると、契約書や保険の手配などが求められる。「まずは副業で手軽に」と思っていたが、なかなかそうはいかないようだ。
協働者との出会いで「ツアーガイド」を再定義
そんなとき、観光NPOの企画会議で出会った女性Aから「翔太さんはナビゲーションが上手ですよね。地図の扱い方が他の人と全然違う」と言われた。
聞けば、Aさんは元々都内の出版社に勤めており、現在はフリーランスで編集者として活動しているという。彼女は「視覚的なルート提示」や「時間配分を計算した動線設計」など、翔太さんが無意識に行っていた要素を「他のガイドにはない強み」として言語化してくれた。
この出会いをきっかけに、翔太さんはツアーガイドというポジションを再定義することにした。Aさんとともに「地図の扱い」や「回遊ルート設計」に特化した観光商品を開発。タイトルは「徒歩20分でめぐる、歴史と絶景の3ルート」だ。
すると、これが自治体から評価され、観光プロモーションツールや訪日客向けの体験プログラムとして採用されるようになった。
やがて翔太さんは、下記のような収益モデルを確立し、年間約650万円の副業収入を実現した。
・自治体・観光協会からのガイド委託:1案件5~10万円(10件程度/年)
・訪日旅行客向けの体験型ツアー:参加料5,000円/人×12人×8回程度/月
・地域イベントやウォーキング企画:1回2万円×20回程度/年
