前回は、マイナス金利政策は「分散投資のあり方」をどう変えたのかを取り上げました。今回は、分散投資で特に意識したい流動性リスクと価格変動リスクについて見ていきます。

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流動性リスクとは「売りたい時に売れないリスク」

ポートフォリオを組む時は、流動性と価格変動(ボラティリティ)に留意する必要があります。図表は、各投資対象の流動性リスク、価格変動リスクの大小と一定の条件で算出した期待利回りを位置づけたものです。バブル(円)の大きさは、各資産の時価総額の大小を取りました。時価総額とは、株式であれば株価×発行済み株式数のことであり、時価総額が大きいということは概して市場規模が大きいことを意味します。

 

【図表】各資産の流動性、価格変動リスクと期待利回り

※ 期間:2016年6月末時点。リスクは過去10年の月次リターンの標準偏差(年率)。グラフ中の数値は時価総額 (兆円)。
※ 先進国国債:シティ世界国債指数、米国投資適格社債:シティ米国投資適格社債指数、世界公益株式:MSCI世 界公益株価指数、米国ハイイールド債券:シティ米国ハイイールド債券指数、 新興国国債(ドル建て):JPモ ルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数(時価総額はJPモルガンEMBIグローバル指数)、新興国国 債(現地通貨):JPモルガンGBI-EMグローバル・ディバーシファイド指数(時価総額はJPモルガンGBI-EMグ ローバル指数)、日本株式:TOPIX、先進国株式:MSCI世界株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数、ブ ラジル株式:ブラジルボベスパ指数、日本REIT:東証REIT指数、グローバルREIT:S&P 世界REIT指数、米国 REIT:MSCI米国REIT指数(すべて円換算)
※ 期待利回りは、債券は最終利回り、株式、REITは益利回り+成長率期待値(先進国株式、グローバルREIT、 米国REIT、世界公益株式は2%、新興国株式、ブラジル株式は4%、日本株式、日本REITは1%とする)
出所:ブルームバーグ、JPモルガンのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※ 期間:2016年6月末時点。リスクは過去10年の月次リターンの標準偏差(年率)。グラフ中の数値は時価総額 (兆円)。
※ 先進国国債:シティ世界国債指数、米国投資適格社債:シティ米国投資適格社債指数、世界公益株式:MSCI世 界公益株価指数、米国ハイイールド債券:シティ米国ハイイールド債券指数、 新興国国債(ドル建て):JPモ ルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数(時価総額はJPモルガンEMBIグローバル指数)、新興国国 債(現地通貨):JPモルガンGBI-EMグローバル・ディバーシファイド指数(時価総額はJPモルガンGBI-EMグ ローバル指数)、日本株式:TOPIX、先進国株式:MSCI世界株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数、ブ ラジル株式:ブラジルボベスパ指数、日本REIT:東証REIT指数、グローバルREIT:S&P 世界REIT指数、米国 REIT:MSCI米国REIT指数(すべて円換算)
※ 期待利回りは、債券は最終利回り、株式、REITは益利回り+成長率期待値(先進国株式、グローバルREIT、 米国REIT、世界公益株式は2%、新興国株式、ブラジル株式は4%、日本株式、日本REITは1%とする) 出所:ブルームバーグ、JPモルガンのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

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市場規模が大きければ、売りたいと思って市場に売り注文を出した時に、買い手が現れやすいと言えます。流動性リスクとはまさにこの「売りたい時に売れないリスク」です。いくら利回りが高かったり値上がり期待が高かったりしても、もし売りたい時に売れなければ、そのリターンは絵に描いた餠ですし、無理に売ろうとすると大きく値段を下げないと買い手が現れない可能性があります。

 

これまで流動性リスクのことに触れる人はあまり多くありませんでしたが、私はこれからは特に重要な観点になると見ています。

 

グラフの縦軸は各資産クラスの期待利回り、横軸はリスク(過去10年)の実績値となっています。期待利回りは、債券は最終利回り、株式・REITは益利回り+成長率期待値を使用して算出しています。あくまでも期待値ですので参考程度にお考えください。

価格変動リスクが低く、市場規模も大きい先進国国債

さて、この図で見ると、先進国国債は価格変動リスクが低く、市場規模も大きい(流動性リスクも小さい)ため、比較的安心して保有ができ、売りたい時にいつでも売ることができると言えます。

 

一方、ブラジル株式は価格変動リスクが大きい上に、市場規模も小さい(流動性リスクも大きい)ため、価格が暴落した時に売るに売れない状況に追い込まれる可能性があります。この図からは、個人投資家に人気の高いアメリカのREITも価格変動リスク、流動性リスクともに高いことが分かります。

 

効果的な分散投資を行うためには、流動性リスクと価格変動リスクも重要な要素となるのです。

 

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本連載は、2016年10月31日刊行の書籍『211年の歴史が生んだピクテ式投資セオリー 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

211年の歴史が生んだ ピクテ式投資セオリー

211年の歴史が生んだ ピクテ式投資セオリー

萩野 琢英

幻冬舎メディアコンサルティング

インフレ経済に転換しつつある今、預貯金では資産を守れない──「投資マインドが低い」「元本保証の預貯金で資産価値を守る」傾向にあった日本人も、今こそ投資によって賢く資産を運用しなければなりません。 本書では、あ…

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