前回は、より分散投資の効果が期待できる投資信託の選び方について取り上げました。今回は、リーマン・ショック時も収益を上げたリスク配分の成功事例を見ていきます。

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組み合わせる資産はそれぞれの「リスク量」で検討

前回の続きです。

 

相関の低い資産を単純に50%ずつ保有すれば分散効果は得られるのでしょうか? 株式と債券を組み合わせる運用をバランス運用と言いますが、実際にバランスさせるには組み合わせる資産の価格変動特性、特にリスク量を理解する必要があります。2006年7月から2016年7月までのデータを使って各資産のリスク(標準偏差)を見てみましょう(図表1参照)。

 

【図表1】各資産のリスク

期間:2006年7月末~ 2016年7月末、年率、リスクは月次リターンの標準偏差
※日本国債:シティ日本国債指数、世界株式:MSCI世界株価指数( 円換算)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
期間:2006年7月末~ 2016年7月末、年率、リスクは月次リターンの標準偏差
※日本国債:シティ日本国債指数、世界株式:MSCI世界株価指数( 円換算)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

世界株式が約21%に対し、日本国債は約2%です。世界株式のほうが日本国債よりも10倍程度リスクが高く、つまり、これは世界株式のほうが10倍近く変動するということを意味します。このため単純に50%ずつ保有すると、その組み合わせた資産の価格変動は世界株式の変動に大きく影響を受けることになります。

 

それでは、うまくバランスさせるにはどうすればいいのでしょうか? 世界株式の変動を日本国債の変動で中和するにはリスクの低い日本国債を世界株式よりも10倍多く保有すればいいのです。配分比率では世界株式9%と日本国債91%の配分がちょうどいい水準と言えます。この配分で保有した場合のリスク量は日本国債とほぼ同じで、パフォーマンスは年率0.2%引き上げることができています(図表2参照)。

 

【図表2】分散マジックを進化させた「マルチアセット・アロケーション運用戦略」

※期間:2006年7月末~ 2016年7月末
※日本国債:シティ日本国債指数、世界株式:MSCI世界株価指数( 円換算)
2006年7月末=100として指数化
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※期間:2006年7月末~ 2016年7月末
※日本国債:シティ日本国債指数、世界株式:MSCI世界株価指数( 円換算) 2006年7月末=100として指数化
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

「マルチアセット・アロケーション」とは?

これがリスク・バジェティングに基づく分散投資の考え方ですが、実際の運用はもっと複雑で幅広く分散投資を行うものです。例えばピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド(愛称:クアトロ)は20以上の異なる資産に投資を行っています(図表3参照)。

 

マルチアセット・アロケーションとは一つのポートフォリオの中に世界中の様々な資産クラス(アセットクラス)を組み込み、分散投資を行う運用手法です。クアトロは投資対象も株式や債券のみならず、絶対収益を目標とするオルタナティブ運用戦略にも投資を行っています。

 

また、2016年7月末現在、株式・リートへの資産配分比率は20.8%しかありませんが、リスク配分比率は50.1%と、債券とオルタナティブのリスク配分率合計とほぼ同じ程度を保有することでリスク量をバランスさせていることがお分かりいただけると思います。それぞれの資産の相関は図表4のように低く、分散が効いたポートフォリオとなっています。

 

【図表3】クアトロの配分比率

 

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※構成比は2016年7月末時点、リスク算出期間は2016年4月末~2016年7月末
※構成比は実質比率(マザーファンドの組入比率×マザーファンドにおける当該資産の組入比率)
※リスクは期間中の日次リターンの標準偏差(年率)を使用
※便宜上、キャッシュ、短期金融商品等のリスクは0%としています。
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※構成比は2016年7月末時点、リスク算出期間は2016年4月末~2016年7月末
※構成比は実質比率(マザーファンドの組入比率×マザーファンドにおける当該資産の組入比率)
※リスクは期間中の日次リターンの標準偏差(年率)を使用 ※便宜上、キャッシュ、短期金融商品等のリスクは0%としています。
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※2016年4月末~2016年7月末
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

【図表4】投資対象資産間の相関係数

※2016年4月末~2016年7月末
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※2016年4月末~2016年7月末
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

市場が混乱した時に、特に威力を発揮する分散投資

これらクアトロの投資対象資産を構成比で加重平均したリスクは9.5%でしたが、分散投資の効果により、クアトロのリスクは2.5%となりました(図表5)。このような運用は市場が大きく混乱した時に威力を発揮します。

 

【図表5】投資ファンドの加重平均リスクとクアトロのリスク

 

※リスク算出期間:2016年4月末~2016年7月末
※リスク低減効果はあくまでも参考値です。
※投資対象資産のリスク(加重平均):2016年7月末現在の構成比をもとに計算。リスクは期間中の日次
リターンの標準偏差(年率)を使用
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※リスク算出期間:2016年4月末~2016年7月末 ※リスク低減効果はあくまでも参考値です。
※投資対象資産のリスク(加重平均):2016年7月末現在の構成比をもとに計算。リスクは期間中の日次 リターンの標準偏差(年率)を使用 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

世界中の資産が同時に大暴落を起こしたリーマン・ショック時を見てみましょう。図表6にあるように、市場は新興国株式マイナス56.7%、先進国株式マイナス49.6%、日本株式マイナス42.1%というように、資産を半減させるような事態に追い込まれたのです。

 

米国ハイイールド債マイナス29.9%、新興国債券マイナス18.2%、世界国債マイナス9.3%と、株式だけでなく債券も同時に大きく下落した厳しい状況でした。

 

そうしたなか、リスク・バジェッティングの考え方で徹底的な分散投資を行い、ピクテ・グループが海外で提供する「ピクテ・マルチアセット・アロケーション戦略」は、このリーマン・ショックの時期にプラス1.7%という収益を上げることができています。

 

【図表6】ピクテのマルチアセット・アケローション戦略のパフォーマンスの推移

 

※期間:2008年6月末~2016年7月末 2008年6月末=100として指数化
※ ピクテ:ピクテのマルチアセット・アロケーション戦略(ユーロベースの低リスク型アセット・アロケーショ
ン運用(費用控除後、円ヘッジベース)
※ 世界国債:シティ世界国債指数、新興国債券:JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数、米国
ハイイールド:バンクオブアメリカ・メリルリンチ米国ハイイールド指数、日本株式:TOPIX、先進国株式:
MSCI世界株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数(すべてトータル・リターン、円換算)
出所:ピクテ・アセット・マネジメント、ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※期間:2008年6月末~2016年7月末 2008年6月末=100として指数化
※ ピクテ:ピクテのマルチアセット・アロケーション戦略(ユーロベースの低リスク型アセット・アロケーショ ン運用(費用控除後、円ヘッジベース)
※ 世界国債:シティ世界国債指数、新興国債券:JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数、米国 ハイイールド:バンクオブアメリカ・メリルリンチ米国ハイイールド指数、日本株式:TOPIX、先進国株式: MSCI世界株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数(すべてトータル・リターン、円換算)
出所:ピクテ・アセット・マネジメント、ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
 
ピクテのマルチアセット・アロケーション戦略の実績は、ユーロベースの運用成果を円ヘッジしたと仮定したもので、クアトロの運用実績ではありません。クアトロには為替リスクがあります。
また、過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。

 

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本連載は、2016年10月31日刊行の書籍『211年の歴史が生んだピクテ式投資セオリー 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

211年の歴史が生んだ ピクテ式投資セオリー

211年の歴史が生んだ ピクテ式投資セオリー

萩野 琢英

幻冬舎メディアコンサルティング

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