医師の働き方改革で加速する医師不足
都市部と地方とで医師数が偏在しているわが国で地域医療を支えていたのは、大学病院から地域の関連病院に派遣されている勤務医たちでした。
わが国では全国すべての都道府県に1校以上の医大(大学医学部)が存在しており、地域の病院の多くは地元大学病院の関連病院となっています。大学病院側から見れば、地域の関連病院は学生や医局員の臨床研修を受け入れてくれる存在であり、関連病院側から見れば、大学病院は必要なときに医師を供給してくれる存在になっていて、両者が関係性を深めることは双方にとってメリットのあることでした。
ところが、医師の働き方改革で勤務医一人ひとりの労働時間に上限が設けられるようになると、大学病院側は地域の関連病院に医師を派遣する余力がなくなりました。勤務する医師1人あたりの労働時間を減らしながら、従来どおりの医療サービスを維持していこうとすれば、これまで以上の人員を確保する必要が出てきたからです。
例えば、1日12時間働く医師10人で120の仕事量をこなしていたとすると、労働時間を1人8時間に制限された場合には、医師が15人いなければ120の仕事量をこなせない計算になります。
その結果起きているのが、それまで地域の病院に派遣していた医師の、大学病院への呼び戻しです。大学病院側からすれば、自分たちの病院の業務を守るのに精いっぱいで、地域の関連病院を援助する余裕はなくなりました。
一方、今まで大学病院から医師を派遣してもらっていた地域の病院では、医師不足がさらに深刻化しました。外来患者に来てもらっても診察する医師がいないため、診療時間を大幅に短縮したり、なかには診療科そのものを閉鎖したりする病院も出てきました。また、地域の救命救急病院でありながら、当直医が確保できないため、夜間の救急搬送の受け入れを制限せざるを得ないケースも続出しています。
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