約40年にわたり国内外の景気分析をしてきたエコノミスト・宅森昭吉氏が、景気や市場を先読みするヒントを紹介する本連載。今回は、「ESPフォーキャスト調査」の面白さとその見どころについて解説します。

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民間エコノミストのコンセンサス調査として毎月実施

『ESPフォーキャスト調査』は景気予測を行っている民間エコノミストのコンセンサス調査として日本経済研究センターが毎月実施しているものである。「概要」は、誰でも日本経済研究センターのホームページで確認できる。

 

約40名の民間エコノミスト(フォーキャスター)を対象に毎月、日本経済の重要指標などの予測値などをアンケートし、その平均値などをコンセンサスとして発表している。

 

この調査では、毎年度、エコノミストの主要項目の予測結果を評価している。仮に毎月総平均と同じ回答をしたエコノミストがいたとすると、その順位は2位~10位と上位に入る。過去20回の順位の平均は6位である。「ESPフォーキャスト調査」の総平均予測も、先行きの景気判断に役立てることができるものと思われる。

 

※主観的な確率分布を除く (出所)日本経済研究センター
[図表1]ESPフォーキャスト調査における予測総平均のランキング ※主観的な確率分布を除く
(出所)日本経済研究センター

実質GDP、全国消費者物価指数…主な景気指標を予測

ESPフォーキャスト4月調査(回答期間:2025年3月27日~4月3日、回答者37名)では、2025年1~3月期の実質GDP成長率・前期比年率の予想平均は+0.08%だ。前回3月調査の+0.16%から下方修正された。2月調査の+1.11%と比べると大幅に下方修正された。個人消費がマイナス予想に下方修正されたほか、設備投資も下振れた。外需寄与度も下方修正となった。4~6月期は+0.79%に回復するが、27年1~3月期まで0%台の低い成長率で推移するというのが、コンセンサス見通しだ。

 

実質成長率の年度予想は24年度が+0.73%と3月調査+0.74%とほぼ同じになった。25年度は+0.92%、26年度は+0.85%で、2月調査の2025年度+1.01%、26年度+0.87%からいずれも下振れた。

 

全国消費者物価指数(生鮮食品除く)の前年比上昇率の予測平均は2025年1~3月期に+3.02%と前回3月調査+2.96%を上回り、+3%台となった。その後は低下が続き、26年1~3月期に+2.0%を割り込む。全国消費者物価指数(生鮮食品除く)の前年度比上昇率は2024年度+2.69%、2025年度+2.33%、2026年度+1.75%という予測で3月調査の2024年度+2.68%、2025年度+2.29%、2026年度+1.72%という予測からいずれも上振れた。

 

(注)上段は総平均、下段のカッコ内は低位8人平均-高位8人平均 (出所)日本経済研究センター
[図表2]「ESPフォーキャスト調査(25年4月)」主な景気指標の予測 (注)上段は総平均、下段のカッコ内は低位8人平均-高位8人平均
(出所)日本経済研究センター

 

◆(景気の転換点)…2020年5月が谷◆

 

20年5月の景気転換点(谷、政府見解)の次の景気転換点(山)はもう過ぎたかどうかを聞いた(回答数35)。

 

★はい(=過ぎたと思う人)…1名(前月調査1名)

転換点(山)…2024年5月(同24年5月)

次の転換点は過ぎていない。…1名(前月調査1名)

今後1年以内に転換点(谷)がくる確率…10.0%(同10.0%)

 

★いいえ(=過ぎていないと思う人)…34名(同35名)

今後1年以内に転換点(山)がくる確率の予測の平均…34.4%(同30.7%)

 

いくつかの特別調査も実施されている。日銀の金融政策については、25年6月末の政策金利(現行0.5%程度)を「0.5~0.6%」とみる回答が最も多く、12月末の政策金利は「0.7~0.8%」との回答が最も多い。下半期に0.25%の利上げが1回予想されている。

 

米国の政策金利(現行4.25~4.50%)は、25年6月末の最多回答が「4.0~4.25%」、12月末の最多回答が「3.75~4.00%」となり、上半期に1回、下半期に1回の利下げが予想されている。

「景気リスク」についての特別調査も、3ヵ月に一度実施

景気のリスクについての特別調査は3ヵ月に一度実施されている。

 

25年1月調査によれば、景気腰折れリスクの第1位は25名で、関税引き上げなどを含む保護主義の高まりだった。トランプ大統領の関税政策の行方は要注目とされていた。第2位は同数16名で、中国景気の悪化、米国景気の悪化だった。

 

25年4月調査では、「米国の景気悪化」が32名で第1位、1月調査の16名から倍増した。「関税引き上げを含む保護主義の高まり」は第2位に後退したが、31名で3月調査から6名増えた。トランプ米政権の関税強化が25年度の日本の実質GDPをどのぐらい下押しするかに関しては、「0.4%以上~0.6%未満」が最も多かった。米実質GDPについても「0.4%以上0.6%未満」が最多だった。

 

*この特別調査は、2023年からは1、4、7、10月と3ヵ月ごとに実施。 ※「関税引き上げなどを含む保護主義の高まり」の2024年10月までは「保護主義の高まり」。「労働市場での人出不足」の2024年10月までは「人出不足」。 ※「円安・ドル高」の2024年10月までは「円安」。 (出所)日本経済研究センター
[図表3]「ESPフォーキャスト調査」特別調査結果◆主な景気のリスク(複数回答、3つまで)推移―半年から1年後にかけて景気上昇を抑える(あるいは景気を反転させる)可能性がある要因― *この特別調査は、2023年からは1、4、7、10月と3ヵ月ごとに実施。
※「関税引き上げなどを含む保護主義の高まり」の2024年10月までは「保護主義の高まり」。「労働市場での人手不足」の2024年10月までは「人手不足」。
※「円安・ドル高」の2024年10月までは「円安」。
(出所)日本経済研究センター

 

 

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか

 

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