「共有名義」はリスク。家族を困らせない選択を
このように、思い入れのある実家であっても、相続人の間で意見が分かれれば、手続きは一気に滞ります。不動産は分けにくい財産のため、ご両親が生前に対策を講じておくことが重要です。
とくに有効な手段は遺言書の作成です。たとえば、
「自宅不動産は長男の義明に相続させる」
といった一文があるだけでも、相続人の意思決定は格段にスムーズになります。さらに
「母が住んでいる間は管理してあげてほしい」
「先祖代々の土地なので大切にしてほしい」
「将来的には売却し、代金はきょうだい3人で平等に分けてほしい」
など、具体的な処分方針まで記載しておくと、相続人の間での意思決定がしやすくなります。
また、不動産を共有名義にすることは極力避けるべきです。共有状態では全員の同意がなければ売却などの処分ができず、共有者に相続が発生すれば持分がさらに細分化。誰が何を決めるべきかも見えづらくなり、結果的に“話し合えない家族”を生んでしまうのです。
相続登記の義務化と“決めないまま”のリスク
なお、このケースのように相続登記が行われないまま10年間放置されていた場合、令和6年4月から相続登記が義務化されたことにより、相続開始から3年以内に登記を行う必要があります(不動産登記法第76条の2第1項)。正当な理由がないまま怠った場合には10万円以下の過料が科されることがあります(同法第164条第1項)。
ただし、今回のように相続人間の対立で協議が進まない事情がある場合は、正当な理由があるとみなされ、過料が課される可能性は低いと考えられます。
このように、実家の相続はトラブルになりやすく、生前に売却を検討することもひとつの選択肢です。自宅を手放す決断は本人にとって大きな勇気が必要ですが、子どもに判断を委ねることの難しさを考えると、元気なうちに自ら方針を決めておくことが、家族にとっても大きな助けになります。
ぜひ、元気なうちに、家族が集まる機会などを活用して、「今後どうしたいか」「住まいをどうするか」について、率直な思いを話し合う時間を持つことをおすすめします。
あねがわ司法書士事務所
司法書士
姉川 智子
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