(※写真はイメージです/PIXTA)

親が亡くなり、誰も住まなくなった実家──売る? 残す? 意見が割れたまま、空き家は10年間“塩漬け”に。相続人の誰も動かず、固定資産税や管理費の負担は長男ひとり。本記事では、あねがわ司法書士事務所の姉川智子司法書士が、生前対策がなかったことで家族が長年悩むことになった実例をもとに、解決策を解説します。

「共有名義」はリスク。家族を困らせない選択を

このように、思い入れのある実家であっても、相続人の間で意見が分かれれば、手続きは一気に滞ります。不動産は分けにくい財産のため、ご両親が生前に対策を講じておくことが重要です。

 

とくに有効な手段は遺言書の作成です。たとえば、

 

「自宅不動産は長男の義明に相続させる」

 

といった一文があるだけでも、相続人の意思決定は格段にスムーズになります。さらに

 

「母が住んでいる間は管理してあげてほしい」

 

「先祖代々の土地なので大切にしてほしい」

 

「将来的には売却し、代金はきょうだい3人で平等に分けてほしい」

 

など、具体的な処分方針まで記載しておくと、相続人の間での意思決定がしやすくなります。

 

また、不動産を共有名義にすることは極力避けるべきです。共有状態では全員の同意がなければ売却などの処分ができず、共有者に相続が発生すれば持分がさらに細分化。誰が何を決めるべきかも見えづらくなり、結果的に“話し合えない家族”を生んでしまうのです。

相続登記の義務化と“決めないまま”のリスク

なお、このケースのように相続登記が行われないまま10年間放置されていた場合、令和6年4月から相続登記が義務化されたことにより、相続開始から3年以内に登記を行う必要があります(不動産登記法第76条の2第1項)。正当な理由がないまま怠った場合には10万円以下の過料が科されることがあります(同法第164条第1項)。

 

ただし、今回のように相続人間の対立で協議が進まない事情がある場合は、正当な理由があるとみなされ、過料が課される可能性は低いと考えられます。

 

このように、実家の相続はトラブルになりやすく、生前に売却を検討することもひとつの選択肢です。自宅を手放す決断は本人にとって大きな勇気が必要ですが、子どもに判断を委ねることの難しさを考えると、元気なうちに自ら方針を決めておくことが、家族にとっても大きな助けになります。

 

ぜひ、元気なうちに、家族が集まる機会などを活用して、「今後どうしたいか」「住まいをどうするか」について、率直な思いを話し合う時間を持つことをおすすめします。

 

 

あねがわ司法書士事務所

司法書士

姉川 智子

 

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※事案の詳細については、実際の事実関係とは一部異なる内容が含まれています。

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