春闘賃上げ率は2年連続の5%台が確実
連合が4/3に公表した「2025春季生活闘争第3回回答集計結果」によれば、2025年の平均賃上げ率は5.42%(前年実績比+0.32%)、ベースアップに相当する「賃上げ分」は3.82%となった(図表2)。
2025年の春闘賃上げ率が、33年ぶりの高水準となった2024年(5.10%)に続き5%台となることはほぼ確実とみられる。また、中小企業(組合員300人未満)の平均賃上げ率は5.00%(前年実績比+0.55%)となった。大企業(組合員300人以上)の5.44%(前年実績比+0.25%)を下回っているものの、2024年に比べて格差は縮小している。連合は2025年春闘の基本構想で、賃上げ要求を2024年に続き5%以上(定期昇給相当分を含む)、中小労働組合は格差是正分を積極的に要求するとしていたが、現時点での妥結状況はそれに沿った動きとみることができる。
本格的な賃上げが実現した背景には、賃上げ率を左右する労働需給、企業収益、物価の3要素がいずれも大きく改善していることがある。有効求人倍率は横ばい圏で推移しているが、引き続き1倍を大きく上回る水準となっており、失業率が2%台半ばで推移するなど、労働需給は引き締まった状態が続いている。
また、法人企業統計の経常利益(季節調整値)は過去最高を更新し、消費者物価上昇率は3%台で高止まりしている。賃上げの環境を過去と比較するために、労働需給(有効求人倍率)、企業収益(売上高経常利益率)、物価(消費者物価上昇率)について、過去平均(1985年~)からの乖離幅を標準偏差で基準化してみると、3指標の合計は2023年に過去最高となった後、2024年はプラス幅が若干縮小したものの、過去2番目の高水準を維持した(図表3)。
労働需給のひっ迫は10年以上続く
特に強調されることが多いのは、人手不足に伴う賃金上昇圧力の高さである。たとえば、日本銀行は年4回公表している展望レポートの中で、その時々の重要なテーマについて分析を行い、BOXとしてまとめているが、2025年1月分では5つのBOXのうち、4つが労働の供給制約や労働需給に関するものであった1。
人手不足が賃上げを後押ししていることは確かだ。しかし、賃上げが本格化し始めた2023年以前から労働需給の引き締まった状態は続いていた。労働需給を反映する代表的な指標である有効求人倍率は2013年終盤に1倍を上回った後、2018年から2019年にかけては1.6倍台まで上昇した。新型コロナウイルス感染症の影響で2020年に落ち込んだ後、再び上昇したが、コロナ禍前の水準には届かず、2022年後半をピークに低下し、2024年以降は横ばい圏で推移している(図表4)。
有効求人倍率はあくまでもハローワーク(公共職業安定所)における求人・求職データである。近年は民間求人サービスの利用増加などにより、有効求人倍率が必ずしも労働市場全体の需給動向を反映しなくなっている可能性がある。
ただし、足もとの失業率は2%台半ばで推移しており、コロナ禍前2%台前半と比べればやや高い。また、実際の失業率から労働市場のミスマッチなどから生じる構造失業率を引いた需要不足失業率2021年以降、マイナス(需要超過)が続いているが、マイナス幅は2018~2019年頃よりも小さい(図表5)。
労働需給の引き締まった状態はコロナ禍を除けば10年以上にわたって続いている。また、企業収益もアベノミクス景気の2017年頃から過去最高水準の更新が続いていた。この数年で大きく変化したのは物価上昇率である。
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1 (BOX2)資本と労働の代替性と労働の供給制約、(BOX3)労働の供給制約と企業の投資活動、(BOX4)労働需給と賃金について、(BOX5)サービス価格の趨勢
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