(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今は少子高齢化が進み、予防医療の重要性が高まっています。それに伴い、医療現場における「おもてなしの精神」すなわち接遇力が注目を集めています。本記事では、消化器外科医であり医療法人社団筑三会筑波胃腸病院・理事長の鈴木隆二氏の著書『選ばれる病院になる 予防医療の接遇力』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集し、詳しく解説します。

立場や事情を察した言葉選び

また検査で待たされてイライラしているビジネスマンに対し、外来での一般的な対応のように「順番に検査をしていますから、もう少しお待ちください」とアナウンスするだけでは不十分です。

 

施設全体で、できるだけ待ち時間が発生しない効率的な検査の流れを考えなければなりませんし、どうしても待ってもらうことになる場合、どのように声をかければ受診者の気持ちが和らぐだろうと、その人の立場や事情を察して言葉を選ぶような力が必要になります。

 

健康診断というのは基本的に年に1回の機会です。その限られた時間で「無事に検査を受けられてよかった。来年もぜひまたここで健診を受けたい」と思ってもらえるような接遇をしなければならないのです。

 

こうした予防医療の接遇は、おそらく外来などの医療職からすると、「そこまでやるの?」と驚くようなものもあるかもしれません。しかし、それは医療の世界と一般社会との違いであって、むしろ一般社会では当たり前のサービスであり、それがその企業や組織の信頼感や安心感の礎となっています。

 

予防医療での接遇は、自分たちの予防医療サービスを気に入ってもらえるようにお客様の機嫌をとるとか、お客様におもねるということではありません。

 

しかし医療の専門知識をもつ医療職が専門知識をもたない患者に寄り添い、意思確認する、といった治療のなかの医療接遇とは、また質の違うものになります。予防医療の接遇の目的は、健診を受診する本人の意向を尊重しながらも、検査値の読み方などを伝え、その人の全体的な心身の健康増進につながるように支援をしていくことです。

 

健診施設の職員はいわばパーソナルな“健康コンシェルジュ”として、受診者一人ひとりに対応していくことが大切になります。

健康診断の目的を知ることが接遇の第一歩

接遇について考えるにあたり、最初に整理しておきたいのがそもそも健康診断は何のためにやるのかということです。健康診断の目的をあらためて考えることで、医療従事者側がとるべき接遇の方向性も見えてきます。

 

健康診断とは、簡便な検査によって受診者の基本的な健康状態を確認するとともに、その年代・集団にとって頻度の高い疾病(生活習慣病など)のリスクを調べるものです。一定の属性の健康な集団のなかから、病気のリスクの高い人をふるいにかけるスクリーニング検査です。

 

また健康診断は1年に1回など、定期的に継続して受けることに意義があります。毎年の健診データを蓄積していき、経年変化のなかで異常へと傾いている兆候がないかを確認し、先々を予測して息の長い健康づくりを支援していくのが、健康診断の本来の目的です。

 

出所:日本医師会
健康寿命延伸に向けて 出所:日本医師会

 

健康診断の対象となるのは基本的に「健康な人」です。気になる症状がある人が病気を疑って検査をするのは、治療の一環ですから健康保険が適用になりますが、健康診断は治療ではないため、検査にかかる費用は原則として全額自己負担になります。

 

ですから同じような検査でも外来で行えば1~3割負担なのに、健診では10割負担となります。

 

鈴木隆二

消化器外科医

医療法人社団筑三会筑波胃腸病院理事長

医学博士

 

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※本連載は、鈴木隆二氏の著書『選ばれる病院になる 予防医療の接遇力』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・編集したものです。

選ばれる病院になる 予防医療の接遇力

選ばれる病院になる 予防医療の接遇力

鈴木 隆二

幻冬舎メディアコンサルティング

著者は自身の医院で健診・検診業務を始めた際に、この考え方を大切にし、医療機関としての専門性を保ちながらもサービス業のような丁寧な対応を目指しました。「接遇」を意識したその姿勢は地域の人たちからも好評を得ており、…

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