オーナーが数部屋ごとに分割して所有する形で運営される「区分所有型ホテル」。湯沢の「スポーリア湯沢」は業績悪化のため2020年に閉鎖された区分所有型ホテルです。自己破産手続が停止されるほど深刻な状況に追い込まれ現在もその状況は変わりません。なぜそこまでの問題に発展してしまったのでしょう。本記事では、吉川 祐介氏による著書『バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮』(角川新書)より一部を抜粋・再編集して、湯沢のリゾートマンションの実態についてご紹介します。
区分所有型ホテルならではの深刻な問題
スポーリア湯沢の建物を建造物として判断すれば、周辺にある同時期のリゾートマンション同様、築後三十数年経過した程度の、堅牢に造られた鉄筋コンクリート製の建築物である。
運営会社が破綻したホテルの残骸であり、その構造はホテル利用に特化して想定したものだが、法律上はあくまでマンションと同様、区分所有権が設定された高層建築物だ。固定資産税は、当然その建物の構造と規模に見合った額が課税されることになる。
つまりスポーリア湯沢の区分所有者は、破綻後は配当金(賃料)を受け取れるわけでもなく、かといって一般のマンションのように自己使用できるわけでもないまま、ただ固定資産税が課税されるだけの「区分所有権」を保有したまま今に至っていることになる。
これは苗場のマンションが10万円で売られている話とは、ある意味では比較にならないほど深刻な問題である。
苗場のマンションはまだ0円で手放せる可能性も残されており、所有者はその気になれば別荘として使うことも可能だが、スポーリア湯沢のような破綻した区分所有型ホテルはそれもできない。
それどころか、そもそも各オーナーは、自分が所有する客室の鍵すら渡されておらず、立ち入ることは不可能である。(実際は賃借権が設定されているので難しいが)仮に所有する客室を何らかの用途で使用するにしても、すでに閉鎖されたホテルでは電気や上下水道、ガスなどのインフラも利用することができない。
【12/18(木) 『モンゴル不動産セミナー』開催】
坪単価70万円は東南アジアの半額!! 都心で600万円台から購入可能な新築マンション
1981年、静岡県生まれ。千葉県横芝光町在住。高校卒業後、新聞配達、バス運転手などをしながら暮らす。その後千葉に引っ越し、自身の家探しの過程で、70~90年代に投機目的で購入されたまま開発されていない「限界ニュータウン」の存在に気付く。
2017年に始めたブログ「URBANSPRAWL 限界ニュータウン探訪記」が話題となり、22年には初の著書『限界ニュータウン 荒廃する超郊外の分譲地』(太郎次郎社エディタス)を刊行。あわせてYouTubeチャンネル「資産価値ZERO 限界ニュータウン探訪記」も開設した。
すでに100か所以上の限界ニュータウンの調査を行い、郊外の別荘地やリゾート地などにも調査範囲を拡大、各紙誌やウェブサイトへ寄稿している。ほかの著書に『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』(朝日新書)。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載所有者なのに使えない、建物に入れない、手放したくても売れない…「バブルリゾート」の現在地