昭和以前の不動産投資においては、「不動産は価値が下がらず資産性が保全されるもの」という発想が大前提。物件が何であれ「値上がりする前にとりあえず買う」という人が少なくなかったといいます。バブル期の湯沢のマンションも同様に投機の対象となりましたが、バブル崩壊後、一気に市場は冷え込むことに。その結果、膨大な数の売物件の出現と管理費の滞納が発生。しかし、売却もままならず、ついに手放すことを諦め、管理費や修繕積立金すらも払わないまま放置するオーナーが続出しているといいます。本記事では、吉川 祐介氏による著書『バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮』(角川新書)より一部を抜粋・再編集して、湯沢のリゾートマンションの実態についてご紹介します。

中古マンションの売値が10万円?苗場の異常なマンション市場

ではなぜ苗場エリアだけ価格が暴落しているのだろうか。

 

挙げられるのはやはりアクセスだ。このエリアは越後湯沢駅からおよそ20㎞も離れた山間に位置し、スキーに特化して開発が進んだリゾート地のため、他の利用用途に乏しいうえ、公共交通機関でのアクセスも悪い。それでいて数千戸にも及ぶ居室が供給されたため、圧倒的な供給過多の状況に陥ってしまった。

 

現在でも苗場周辺の中古マンションの物件広告を見ると、物件によって築年数や間取り、広さは様々であるにもかかわらず、価格はどの物件であれ一律10万円、という状況が常態化している。

 

この価格で業者に売買の仲介を依頼した場合、おそらく手数料を支払うと売主の手元には1円も残らないか、逆に販売価格以上の仲介手数料を支払って、事実上、お金を払って物件を売却(処分)しているのは間違いない。

 

購入を希望する人の視点に立って考えてみよう。どんな部屋でも一律10万円となれば、誰だって眺望がよく快適な部屋を選択するだろう。マンションの管理費は基本的に居室面積に応じて決まるもので、北向きの低層階だからと言って管理費が大きく割安になるわけではない。

 

リゾートマンションを購入する際は一番高額な部屋を買えと指南しているメディアを見たことがあるが、これは一理ある話で、限られた需要しかないリゾートマンションの場合、価格の高い部屋というものは、皆が欲する条件があるからこそ高いのであって、価格が安い部屋というのは、それはそのまま売却の困難さに直結しているのだ。

 

それが、最上階の部屋でも10万円となったらどうなるか。条件の悪い部屋は、たとえ10万円まで価格を下げたとしても、いつまでたっても何の引き合いもなくなってしまう。

 

そして実際、苗場のマンションには、おそらく長期間広告が出され続けていると推察される物件がかなりある。僕は湯沢に限らず、物件広告サイトは日常的にチェックして大まかな価格の動向は調べているが、そんな地域でも格安の物件というのは一定数の「お気に入り登録者数」(物件サイトによってはその数を公開している)が集まるものだ。

 

ところが、苗場に限ってはその傾向がまずなく、10万円のマンションの広告に、一人のお気に入り登録者もついていないときも多々ある。業者も商売なのだから、赤字になるような手数料設定を行うことはないが、旨味のある商品ではないので宣伝に熱心になるわけでもない。単に業者が提示できる最低限のラインが10万円というだけの話で、売主の皆が皆、10万円の売却益を求めて広告を出しているわけではないのだ。

 

売値に10万円と記載されていたとしても、長期間買い手を待ち続けている売主であれば、おそらく交渉次第でもっと値下げもできるとは思うが、もはやそれを行う人も現れないほど需要が激減している。そしてこの苗場の異常なマンション市場が、あたかも湯沢全体の状況であるかのように吹聴されている。

 

 

吉川 祐介

 

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※本連載は、吉川 祐介氏による著書『バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮』(角川新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮

バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮

吉川 祐介

KADOKAWA

バブル期に大量に建設されたリゾートマンション、会員制リゾート―― ・アクセス難で苗場のマンションが10万円 ・40平米の1Rマンションを見ず知らずの20人で所有 ・リゾートホテルの建物が1250分割、ワンフロアが200分割…

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