昭和以前の不動産投資においては、「不動産は価値が下がらず資産性が保全されるもの」という発想が大前提。物件が何であれ「値上がりする前にとりあえず買う」という人が少なくなかったといいます。バブル期の湯沢のマンションも同様に投機の対象となりましたが、バブル崩壊後、一気に市場は冷え込むことに。その結果、膨大な数の売物件の出現と管理費の滞納が発生。しかし、売却もままならず、ついに手放すことを諦め、管理費や修繕積立金すらも払わないまま放置するオーナーが続出しているといいます。本記事では、吉川 祐介氏による著書『バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮』(角川新書)より一部を抜粋・再編集して、湯沢のリゾートマンションの実態についてご紹介します。
湯沢の3つのエリア、それぞれの状況
価格面において、特に深刻なのは苗場エリアの状況だ。苗場のマンションの市場価格があまりに暴落してしまったために、それがあたかも湯沢町全体のマンション事情であるかのように語られてきた。
湯沢町内にはマンションの密集エリアが大きく分けて3つある。越後湯沢駅周辺、上越線の岩原スキー場前駅周辺、そして苗場エリアの3か所で、また湯沢町の北に位置する舞子高原(南魚沼市)にもリゾートマンションが並ぶエリアが存在する。
一般的な都市型マンションにおいても、駅や商業地域からの距離によってその市場価格や資産性に違いがあるように、湯沢周辺においても、マンション密集エリアはそれぞれ条件が異なっており、それもまた価格を決める要因の一つになっている。
3つのエリアのうち、湯沢町の入口である越後湯沢駅は今も上越新幹線の停車駅であり、関東方面から新潟県に向かう際に最初に到着する駅である。その越後湯沢駅の徒歩圏内にリゾートマンションが複数存在するが、駅近くのリゾートマンションの部屋が10万円で販売されるようなことはまずない。
例外的に、ワンルームの部屋が数十万円で販売されることもあるにはあるが、そのようなマンションは大体、築年数が古く、バブル期のマンションと比較して居室の造りや設備が見劣りすることが多い。
しかしいずれにせよ、越後湯沢駅周辺、および上越線の岩原スキー場前駅周辺エリアに点在するマンションは、管理が放棄され朽ち果てているようなことはない[写真2]。
どのマンションも今なお、別荘、あるいは定住用途として利用されている。新築当時の販売価格から考えれば大きく下落しているのは間違いないが、それはリゾートに限らず地方や郊外のマンション全体に共通して言えることで、新築当初より価格が上昇しているマンションはむしろ都市部の、それも好条件に恵まれた限られた地域の現象である。
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1981年、静岡県生まれ。千葉県横芝光町在住。高校卒業後、新聞配達、バス運転手などをしながら暮らす。その後千葉に引っ越し、自身の家探しの過程で、70~90年代に投機目的で購入されたまま開発されていない「限界ニュータウン」の存在に気付く。
2017年に始めたブログ「URBANSPRAWL 限界ニュータウン探訪記」が話題となり、22年には初の著書『限界ニュータウン 荒廃する超郊外の分譲地』(太郎次郎社エディタス)を刊行。あわせてYouTubeチャンネル「資産価値ZERO 限界ニュータウン探訪記」も開設した。
すでに100か所以上の限界ニュータウンの調査を行い、郊外の別荘地やリゾート地などにも調査範囲を拡大、各紙誌やウェブサイトへ寄稿している。ほかの著書に『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』(朝日新書)。
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