(※写真はイメージです/PIXTA)

一般的にアトピー性皮膚炎治療は難しく、長期におよぶケースがあります。本記事は、幼少期よりアトピー性皮膚炎を患った経験を生かして治療にあたっている皮膚科医の石黒和守氏が、著書『“前向き”アトピーライフ』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋・編集し、実際に行っている治療方法を詳しく解説します。

頼るべきは民間療法?

アトピー性皮膚炎は合併症のリスクがあり再発しやすいのが特徴で、治療は難しく長期におよぶ場合もあります。そのため医療機関で治療を受けたが改善したという実感が得られず、インターネットやSNSの不確かな情報をうのみにして誤った民間療法を選ぶ人もいます。

 

皮膚科医である私自身も実は幼少期からアトピー性皮膚炎に悩まされてきました。そのため、昔は早く治したくて民間療法を多く試しましたが、症状はむしろ悪化しました。

 

民間療法のなかには「おばあちゃんの知恵」のような昔からの方法で効果がみられるケースもあります。

 

しかし、アトピー性皮膚炎は、そういった付け焼刃のような手段では決して改善しません。アトピー性皮膚炎の治療には、臨床試験の結果を基に作成されたガイドラインが設けられていて、多くの医療機関がその内容を基に医療方針を定めています。

 

ガイドラインが示す治療法は、患者の安全が第一に考えられ、副作用のリスクを最小限に抑えながら、その有効性が科学的に証明されているからです。アトピー性皮膚炎を本気で治したいのであれば、信頼のおける医療機関を受診することが安心して治療に臨むうえで最良の選択です。

患者に合わせた治療プランを

ひと口に治療といっても、患者ごとに治療方針は異なります。アトピー性皮膚炎は、患者や年齢で症状が異なりますし、治療方法によっては効果が高くても苦痛や精神的負担を伴う場合があります。患者自身が満足する治療を受けるには、医師とのコミュニケーションが欠かせません。

 

私も治療方針などを定める際には患者との対話を重視します。対話を通して治療方針が定めやすくなるからです。

 

例えば、「かゆみを抑えて、ぐっすり眠れるようにしたい」という悩みであれば、快適な生活が送れるよう根治を目指す長期的な治療方針が必要です。その患者が治療する過程で結婚を決めたのならば、「式までに服から出る部分をしっかり治そう」と見た目を改善する対症的な治療方針に切り替えます。

 

つまり、患者の希望や目標に応じて、治療方針を変えるのです。実際の治療では、段階を踏んで細かく治療方法を変えていきます。

 

よく私は治療を登山にたとえます。登山初心者が最初から超難関のエベレストを目指すことはまずありません。はじめは難易度が低い山を目標にするはずです。

 

アトピー性皮膚炎における私の治療方法も同様です。

 

登山者が成功経験を少しずつ重ねることでより難易度の高い山を目指すように、アトピー性皮膚炎の治療においても患者の症状に合わせて少しずつ治療方法を変えます。

 

私はこのやり方を「ステップアップ式ゴール設定」と呼んでいます。

 

次ページアトピー性皮膚炎の治療法「ステップアップ式ゴール設定」とは

※本連載は、石黒和守氏の著書『“前向き”アトピーライフ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・編集したものです。

“前向き”アトピーライフ

“前向き”アトピーライフ

石黒 和守

幻冬舎メディアコンサルティング

肌荒れや我慢できないかゆみなど、アトピー性皮膚炎は患者の心身に大きな負担を与える非常に厄介な疾患です。また完治が難しく、生涯にわたって慢性的な症状に悩まされ続ける患者も少なくありません。 皮膚科医であり、自身…

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