アトピー性皮膚炎の患者にとって汗は本当に悪者か?
アトピー性皮膚炎の患者にぜひ知ってほしいことの1つに、アトピー性皮膚炎と汗との関係があります。アトピー性皮膚炎の治療において、長年にわたり汗は症状を悪化させる悪いものだと考えられてきました。
しかし、今では必ずしもそうではないことがガイドラインにも明記されました。これは非常に重要なことなので、ぜひとも多くの人に知ってほしいと思います。
かつては汗をかくとかゆみがひどくなるため、アトピー性皮膚炎の患者はできるだけ汗をかかないように生活することが必要だと考えられていたのです。
しかし、私はこの常識に疑問を持っていました。なぜなら自分自身の経験からも、汗をかくことがそれほど悪いことだとは感じられなかったからです。
汗をかく行為としては、スポーツが代表的です。私は剣道やテニスなどさまざまなスポーツに打ち込んできました。たしかに、スポーツをして汗をかくとかゆみが増します。
しかし、汗をかくことは悪いことばかりではありませんでした。汗によるかゆみは出るもののそれ以上に爽快感も得られますし、何より症状が改善することもあったからです。
こうした経験から、一概に汗が悪者だと決めつけることにはどうも納得がいきませんでした。
汗は悪者ではないかもしれないと漠然と考えていながらも、それを裏付けるほどの根拠は見つけることができなかったある日のことです。患者の声から大きなヒントを得ることができました。
アンケートで驚きの結果が
2004年の日本皮膚科学会総会で、「アトピーの皮膚科医が語るアトピー性皮膚炎」という演題で発表する機会を得たときのことです。その発表にあわせて、アトピー性皮膚炎の患者にアンケート調査を実施しました。
「どんなときにかゆみが増しますか?」との質問では「汗」(25%)が最も多く、次いで「乾燥」(18.7%)、「入浴後」(12.5%)、「就寝時」(12.5%)、「暖かくなるとき」(8.3%)、「酒」(6.2%)、「ホコリ」(4.1%)などがありました。このアンケート結果を見ても、汗でかゆみが増すという回答が最も多いことが分かります。
さらに「汗をかいたあとかゆくなりますか?」との質問で「はい」と答えた人は97.5%と、ほとんどの人がかゆくなると回答していました。また、「熱い風呂のあとでかゆくなりますか?」との質問で「はい」と答えた人は67.5%でした。
それに対して「サウナのあとでかゆくなりますか?」との質問で「はい」と答えた人はわずか15.8%しかいなかったのです。
これは非常に意外な結果でした。
サウナは風呂より温度も高く、汗も多くかくはずです。しかし風呂と比べてサウナでかゆくなるという人は少ない結果となっていたのです。この三者間でかゆみを比べると、汗>熱いお風呂>サウナの順に有意差があることが分かりました。
これには非常に驚きました。私は、汗でかゆくなる人が95%、風呂でかゆくなる人67%ならば、サウナでかゆくなる人は80~90%にはなるだろうと予測していたからです。
私自身、かゆくなるのが嫌でそれまでサウナは避けていたので、この結果を見て唖然としました。
