アトピー性皮膚炎に早期対策で立ち向かう
アトピー性皮膚炎は年代ごとに症状や対処法が大きく異なります。とりわけ乳児・幼児期は、アトピー性皮膚炎の患者にとって非常に重要な時期です。この時期に適切に対処するか否かが、将来的な健康への影響を及ぼすからです。
まず、アトピー性皮膚炎の症状についてですが、重症度に応じて軽症、中等症、重症、最重症の4段階に分けられます。
軽症は皮膚に軽い赤みや乾燥がある状態を指し、中等症は強い炎症を伴う発疹が、体の1割未満の面積に見られる状態です。
重症は強い炎症を伴う発疹が体の約3割に見られる状態、そして最重症は強い炎症を伴う発疹が体の3割以上に見られる状態です。
乳児期の段階では軽症であることがほとんどです。乳児期は額や頰、頭などの乾燥から始まり、少しずつ皮膚が赤くなっていく傾向にあります。皮膚に現れる赤い斑点や発疹は紅斑と呼ばれ、次第にかゆみを伴うブツブツができて黄色い浸出液(傷を修復するための細胞の集まり)がにじみ出します。浸出液が乾くと細かい銀白色のかさぶたになり、最後はかさぶたがボロボロと落ちることが多いです。
髪の毛の生え際から頭頂部にかけてジクジクした発疹も現れます。湿疹は非常に強いかゆみを伴うので、子どもは我慢できずかきむしってしまい、掻破痕と呼ばれるひっかき傷があちこちにできます。
幼児期に入ると今度は皮膚が乾燥しやすくなり、毛穴の周りに「アトピックスキン」と呼ばれる小さなブツブツができます。耳が切れたり陰嚢にかゆみが生じたり、かかとなど足の裏の皮膚がひび割れたりするほか、顔に細かいかさぶたができてボロボロとこぼれ落ちるなどの症状も見られます。
この段階になると、多くの親は子どものアトピー性皮膚炎を深刻にとらえるようになります。
アトピー性皮膚炎と遺伝子
実際に私は、アトピー性皮膚炎と診断された子どもを持つ親から「この病気になったのは遺伝子が原因でしょうか?」などと相談されることがよくあります。多くの親は、遺伝子によりアトピー性皮膚炎の症状が子どもの生涯にわたり続くことを恐れています。
確かに、アトピー性皮膚炎の発症には遺伝因子が関係していますが、患者の環境も重要と考えられています。
また、生後すぐの乳児がアトピー性皮膚炎になることは決してありません。私も生後からしばらくは、ツルツルしたきれいな肌でした。実際、生まれつきフィラグリンがまったく作れない体質の患者であっても、スキンケアと正しい治療をすれば重症化を避けられるという報告があります。
なお、フィラグリンの遺伝子の状態は、一部の施設が実施している検査で分かるほか、手のひらで判断することも可能です。親指の付け根にある丸いふくらみ(母指球)にシワが多いと、フィラグリン異常が多い傾向にあります。
また、爪から得られる情報もあります。例えば爪が真珠のように光っていると、皮膚をかいた状態だと分かりますので、無意識にかいているかもしれないことを指導します。いずれにせよ、乳幼児期での対応は重要です。
この時期に、アトピー性皮膚炎が重症化すると、将来的に気管支喘息やアレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどを発症するリスクが高まるとされています。早期に発見し、適切な治療や予防策を講じることが肝心です。
