国税庁が「海外資産」に目を光らせているワケ
近年、資産運用の国際化が進みつつあり、国税庁が令和7(2025)年1月に公表した「令和5年分の海外資産調書の提出状況」によると、国内居住者の海外資産総額は前年比13.4%増の6兆4,897億円、調書の提出件数も同6.0%増の1万3,243件となっており、それぞれ過去最高を記録しました。
同庁の担当者は「株価の上昇と円安により増加したのではないか」との見方を示しています。
海外資産の内訳をみると、有価証券が4兆905億円と約63.0%を占めており、次いで預貯金8,479億円が続いています。また、海外資産に関する所得税、相続税の申告漏れが生じた際に課される加算税について、調書の未提出などで重くなったのは303件、調書が提出されていたことで軽減されたのは168件でした。
上記からわかるように、国税庁は間違いなく富裕層などの海外資産の把握に注力しているといえます。
今回の事例では亡き父に仕事上海外赴任経験があり、現地で銀行口座を保有していたこともあったため、税務調査の対象に選ばれることとなってしまいました。
現金、株式、不動産…あらゆる海外資産が「課税対象」
相続税の課税対象となる海外資産には、さまざまな種類があります。今回のような海外口座のほか、暗号資産やNFTなども課税の対象です。
海外の銀行口座や証券口座に預け入れられている現金、株式や債券などの投資商品は、相続人や被相続人の居住状況によって日本や他国でも相続税の対象となることがあります。
また、海外にある不動産も相続税の課税対象です。たとえば、被相続人が保有していた海外の住宅や土地、コンドミニアムなどの別荘は、相続時に日本および他国でも課税対象となる場合があります。
そのほか、海外に保有している美術品や骨とう品も対象です。これらを申告する際は、正確な資産の把握と評価および申告が求められます。
日本の相続税制度では、基本的に亡くなった人のすべての財産が対象です。それは、海外資産も。

