資産や利益がマイナスなら、株式の評価額は下がる
前回ご紹介した株式の評価方法からも推察できるように、株式の評価額は会社の純資産や利益などが多ければ高くなり、逆に少なければ低くなります。そこで大まかにいえば、会社の純資産や利益などをできるだけ減らす、すなわちマイナスの状態にするよう努めれば、自社株式の評価額も下がることになります。
会社の純資産や利益などをマイナスの状態にする方法としては、例えば、マンション、アパートの大規模修繕などを行って支出を大幅に増やすなどのやり方が考えられます。このような方法を用いることにより、相続時以前に純資産がマイナスの状態となったときがあれば、そのときに家族に株式を贈与してしまう、すなわち株式移転を行うのが有効な相続税対策となります(株式に価値がないと評価されれば、贈与税は課されません)。
拒否権付き株式なら議決をコントロールできる
もっとも、子供に株式を贈与するようなケースでは、経営権を全面的に与えることに不安を感じるかもしれません。そのような場合には、拒否権付き株式を用いて自らの経営権を確保しておく手だてを講じておくとよいでしょう。
拒否権付き株式とは、株主総会で決めるべき一定の事項について議案を否決する権利を付与した株式であり、一般に黄金株と呼ばれています。例えば、会社が売却されるようなことを防ぎたいのであれば、子供に株式を譲渡する一方で、自身は会社売却の議案を否決する権利が付与された黄金株を保有しておけばよいのです。
このような黄金株を活用できることは株式会社の大きなメリットといえるかもしれません。なお、黄金株を利用するためには、定款にその旨を記載しておくことと(下記の図表参照)、登記簿へその旨を記載しておくことが必要となります。