前回は相続発生前に同等の効果を得られる「非上場会社の株式に係る贈与税の納税猶予制度」について説明しました。今回は、一般社団法人、一般財団法人を利用した節税のメリットと、一般社団法人の設立手順について解説します。

「一般社団法人」「一般財団法人」も法人化の選択肢

前回までの連載では、主に株式会社と合同会社を設立する方法について説明してきました。しかしながら、法人化の手法としては、これらの会社以外に、一般社団法人あるいは一般財団法人の設立もその選択肢になりえます。

 

一般社団法人、一般財団法人を利用することのメリットを確認しておくと、まず、いずれの法人であっても、会社と同様の形で税負担を減らすことが可能だということです。すなわち、前述した所得分散等の手法を使って効果的な節税対策を行うことができます。

 

さらに、一般社団法人、一般財団法人は、会社と異なりその構成員が法人に対して持ち分をもちません。したがって、株式会社や合同会社の場合には得られなかった独自の節税効果が期待できます。

 

株式会社、合同会社の場合であれば、最終的に相続した株式、持ち分に対して相続税が課されるおそれがあるのです。しかし、一般社団法人、一般財団法人では持ち分がないので、そのような事態を免れることができるのです。また、当然のことながら相続人の間で持ち分をめぐる相続争いが起こることも避けられます。

 

なお、一般社団法人、一般財団法人を法人化の手段として選択する場合には、適正な運営を行うために、通常、後述する理事会を置くことが必要となるでしょう。

一般社団法人を設立するには?

一般社団法人、一般財団法人を設立する方法について見ていきましょう。

 

まず、一般社団法人を設立するためには、設立時に2人以上の社員が必要となります。運営組織が設立後に社員が1人だけ減ることは問題ありませんが、社員が0人となった場合には法人を解散することになるので注意が必要です。

 

なお、一般社団法人の社員には、法人がなることもできます。ただし、法人の従たる事務所の性質を有する支店、支部、営業所等は、一般社団法人の社員となることはできません。具体的な設立の流れは以下の通りです。

 

〈手順①〉設立時社員(法人成立後最初の社員となる者)が定款を作成し、公証人の認証を受ける。

定款には、以下の事項を記載します。

 

●目的

●名称

●主たる事務所の所在地

●設立時社員の氏名または名称および住所

●社員の資格の得喪に関する規定

●公告方法

●事業年度

 

なお、次のような事項は、定款に記載しても効力を有しません。

 

●一般社団法人の社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定め

 

●法の規定により社員総会の決議を必要とする事項について、理事、理事会その他の社員総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定め

 

●社員総会において決議をする事項の全部につき社員が議決権を行使することができない旨の定款の定め

 

〈手順②〉設立時理事(設立時監事や設立時会計監査人を置く場合は、これらの者も)の選任を行う。

 

〈手順③〉設立時理事(設立時監事が置かれている場合はその者も)が設立手続きの調査を行う。

 

〈手順④〉法人を代表すべき者(設立時理事または設立時代表理事)が、法定の期限内に設立の登記の申請を行う。

本連載は、2014年11月27日刊行の書籍『地主の相続財産は法人化で残す』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地主の相続財産は法人化で残す

地主の相続財産は法人化で残す

小澤 豊,川本 泰正

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税をできるだけ節税したい、遺産分割で家族がもめてほしくない──。地主にとって相続は、頭の痛い問題です。 多くの地主の相続財産は、現金ではなく土地が大半のため、いざ相続になったときに預貯金だけでは相続税を支払…

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