前回は合同会社と株式会社をそれぞれ変更する際の手続きについて説明しました。今回は、株式会社として法人化することで、相続にどのようなメリットがあるかについて見ていきます。

株式会社での法人化は、事業承継に効果を発揮

法人化のメリットとしてまず挙げられるのは、「事業の承継がしやすくなる」という点です。このメリットは株式会社の形で法人化を行った場合に、最も効果が大きくなるかもしれません。

 

つまり、個人事業の場合、相続の際、マンション、アパートは不動産のまま相続されることになりますが、相続争いが起きて分割方法がまとまらないときには、その権利関係が非常に複雑で面倒なものとなるおそれがあるということです。その結果、相続後の事業に悪影響がもたらされる危険性があるのです。

 

一方、管理会社を株式会社の形にしておき、なおかつマンション、アパートの所有権を移転しておけば、相続の対象は不動産ではなく株式となります。相続が起きても不動産は会社のものですから、その権利関係が複雑なものになるおそれはありません。

 

したがって、不動産の所有関係が問題になり、事業に悪影響がもたらされるような事態は避けられるわけです。

[図表1]不動産は株式に変わる
[図表1]不動産は株式に変わる

自社株式の評価方法をしっかり把握しておく

株式会社を設立した場合には、相続税との関係で相続時の株式の評価額が問題となるでしょう。上場していない株式(非上場株式)であっても、相続時には相続税評価の対象となります。

 

したがって、株式の価値が高くなっていると、結果として、相続税の負担が重くなる可能性もあります。例えば、賃貸事業からの収益が社内に数千万、数億単位でたまっているような状態であれば、株式の評価額も相当な額になるでしょう。

 

そこで、相続対策の観点からは、相続前に自社株式を計画的に贈与して後継者等へ移転していく方法をとります。また、生前に評価が下がりきったときに贈与等により移転していくことが必要になります。


では、そのためには具体的にどのような手段が考えられるでしょうか。まず、株式がどのような形で評価されることになるのかを確認しておきましょう。

 

非上場株式については、税務上、「取引相場のない株式」として評価されることになります。取引相場のない株式の評価額は、会社の規模や株式を取得する者が同族株主か否か等に応じて、①類似業種比準方式、②純資産価額方式、③類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式、④配当還元方式という4種類の方法で計算されます。それぞれの評価方式の意味や計算方法等は、図表2のような形になっていますので、確認してみてください。
 

 

[図表2]大会社、中会社、子会社を区別する基準
[図表2]大会社、中会社、子会社を区別する基準

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    幻冬舎メディアコンサルティング

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