相続前に活用できる贈与税の納税猶予制度
前回の続きです。相続前に「非上場会社の株式に係る相続税の納税猶予制度」と同様の効果を得ておきたいのであれば、「非上場会社の株式に係る贈与税の納税猶予制度」を利用することをお勧めします。
この制度を使えば、後継者が、先代経営者から自社株式の贈与を受け、「一定の要件」を満たす場合には、贈与前から後継者がすでに保有していた議決権株式を含めて、議決権を完全に有する発行済み株式の3分の2に達するまでの部分について、贈与税の全額の納税が猶予されることになります。
「一定の要件」については、「非上場会社の株式に係る相続税の納税猶予制度」と同様に、①先代経営者(贈与者)、②後継者(受贈者)、③対象会社に関するものが、それぞれ以下のような形で定められています。
先代経営者(贈与者)が・・・
●会社代表者であったこと
●役員を退任すること(平成27年1月1日以後は、代表者を退任することが要件になる)
●同族関係者(親族等)と合わせて発行済み議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ、同族内で筆頭株主であったこと
など
②後継者(受贈者)が・・・
●会社の代表者であること
●先代経営者の親族であること(平成27年1月1日以後は、親族外でもよい)
●20歳以上、かつ役員就任から3年以上経過していること
●同族関係者(親族等)と合わせて発行済み議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ、同族内で筆頭株主となること
など
③対象会社が・・・
●135ページの図表21の資本金または従業員数のいずれかの要件を満たしていること
●非上場会社であること
●資産管理会社(自ら使用していない不動産等が70%以上ある会社やこれらの特定の資産の運用収入が75%以上の会社)ではないこと
●相続した対象株式を継続保有すること
など
5年経過後も「猶予」を継続できる場合も
さらに以下のような要件を満たすことで、①5年間、さらにまた、②5年経過後も納税猶予を継続することができます。
①5年間
●後継者が代表者であり続けること
●毎年、雇用の8割以上を維持すること(平成27年1月1日以後は、5年間の平均で雇用の8割以上を維持すればよい)
●贈与を受けた対象株式を継続保有すること
など
②5年経過後
●対象株式を継続保有等する
さらに以下の場合には猶予額が免除されます。
●先代経営者が死亡した場合
●後継者が死亡した場合
●会社が破産または特別清算した場合(平成27年1月1日以後は、事業再生等の場合に一部免除されるようになる)
●対象株式の時価が猶予額を下回る中、株式譲渡を行った場合
納税猶予制度を利用するための手続きとは?
「非上場会社の株式に係る贈与税の納税猶予制度」を利用するための手続きは以下のような流れとなっています。
〈手順①〉贈与の翌年1月15日までに申請する
定款、株主名簿の写し、登記事項証明書、従業員数証明書等を添付します。
〈手順②〉審査後、認定書の交付を受ける
〈手順③〉認定書の写しとともに、贈与税の申告書等を提出する
定款、株主名簿の写し、登記事項証明書等を添付します。
〈手順④〉納税猶予税額および利子税の額に見合う担保を提供する
特例を受ける非上場株式のすべてを担保として提供すれば、納税猶予税額および利子税の額に見合う担保提供があったものと見なされます。
〈手順⑤〉5年間、経済産業局へ「年次報告書」を提出する(年1回)
〈手順⑥〉5年間、税務署へ「継続届出書」を提出する(年1回)
〈手順⑦〉5年間の経過後は、税務署へ「継続届出書」を提出する(3年に1回)