近くに住んでいるから…託された母の世話
判断を間違えた……。A子さん(54歳)は後悔でいっぱいでした。
A子さんは結婚後も、実家から車で15分ほどの距離に住み、2人の子どもを育てながらパート勤務。父が亡くなった数年前からは、実家で独り暮らしをする母の様子を気にかけ、週末に短時間、様子を見に行くようにしていました。
きょうだいは3人。A子さんは真ん中で、兄も妹も別の県に移り住み家庭を持っています。距離の問題もあり、母の世話は、自然と近くに住むA子さんの役割になっていました。
母もまた、近くにいるA子さんを頼り、「ありがとうね。私が死んだら、この家も土地も、貯金も、A子に多めに渡したいと思っているの」と何度も口にしていました。
兄と妹からもこんな言葉をかけられていました。
「遺産は全部あげるから、母さんのことよろしく頼むよ」
「お母さんのこと心配だけど、遠くて何もできなくて。本当に助かる!」
一見すると協力的なようですが、実際には“遺産を免罪符”にして、母の世話をA子さんに丸投げしていたのです。
もっともA子さん自身、子どもが小さかったころは逆に母に助けてもらったこともあり、「自分がやるべき」とある程度は納得していました。また、母の遺産は、不動産や預貯金を合わせて3,000万円以上になりそうだとも聞いていました。「お金をもらえるなら」と思わなかったかといえば、嘘になります。
けれど、考えが甘かったことに、後になって気づかされるのです。
