※画像はイメージです/PIXTA

ニュージーランドで不動産ビジネスに従事する著者のもとにかかってきた、法律事務所からの電話。それは、筆者の過去の顧客に伝えなければならない大切な情報でした。今回は、NZ不動産の保有に伴う注意点を、不動産売買コンサルタントの目線で解説します。※本記事では、オークランド在住で不動産会社を経営する著者が、現地でしか掴めない不動産事情をレポートします。

NZの不動産を買った顧客に、遺言書作成を進めるワケ

筆者は、物件を購入された方には必ず、遺言書の作成をお勧めしています。「そんな大げさな…」「私、まだ若いですよ!」などといって抵抗感を示し、作成しない方も多いのですが、万が一の事態が起きて相続が発生したとき、遺言書のあるなしで、手続きの大変さはまったく違ってきます。

 

これまでの経験から、遺言書があれば、長く見積もっても3ヵ月以内には相続手続きのめどがつきます。事前に準備しておけばシンプルな手続きですみ、短期間で対処できるのです。

 

しかし、遺言書がない場合はものすごく大変です。日本の戸籍から家族・親族を調べて相続人を探し、また、NZと日本の両方で、愛人や隠し子がいないかも調査します。その結果、家族が予想もしなかった事実が判明してトラブルに…というケースもありました。

 

日本人の夫婦の相続なら、日本とNZの法律を考えるだけでいいのですが、もし国際結婚の夫婦なら、配偶者の出身国の法律等も影響し、手続きはさらに複雑化します。

 

今回の例のように、遺言書の作成・保管を依頼していた担当弁護士が亡くなった場合は、別の弁護士が引き継いで保管する、という流れが一般的です。もちろん、作成者本人が自分でほかの弁護士へ依頼し、保管する弁護士を変更することも可能です。

 

しかし、依頼者が弁護士に連絡先の変更を伝えていなかったり、依頼者の死亡が弁護士に伝わっていなかったりすれば、手続きしようにも連絡が取れないので行えません。大切な財産をきちんと受け渡すためにも、事前に相続人へ担当弁護士の連絡先を伝えておくことが必要です。

 

とはいえ、NZでの不動産購入から10年、20年と時間が経過し、生活基盤や主要な財産がすでに日本にある場合、NZで作成した遺言書のことなど頭からスッポリ抜け落ちているのかもしれません。なにより、遺言書の内容自体が、時間の経過に伴って生じた相続人や産分割の方針の変化に対応できていない可能性もあります。

 

遺言書を作成した方は、資産内容や相続人に変化が生じたら、速やかに弁護士に伝えて遺言書を更新するか、あるいはいっそのこと、資産をすべて日本へ移して日本の法律だけで完結できるようにするなど、トラブルの予防策をとることをお勧めします。

 

とくに高齢の方の場合、NZに居住していた当時はスムーズだった英語での会話や読み書きも、帰国して時間が経過すれば、以前のようには行えず、コミュニケーションが困難になりがちです。それ以前に、パソコンやスマホのスキルが不十分で、遺言書の更新どころか、手続きへの着手すらできないという方も珍しくないのです。

 

とはいえ、少なくとも日本で遺言書を作成し、そこでNZの資産について言及していれば、時間はかかるもののNZの相続手続きを進めることは可能です。国際相続にくわしい弁護士や税理士とよく相談したうえで、対策していただければと思います。ただ、日本から9,000km近く離れたNZの状況を日本にいながら把握するのは容易ではなく、言葉の壁の問題もあることから、どうしても時間がかかります。

 

このような問題を防ぐには、やはり、NZの法律に基づいた遺言書の準備や、財産管理の委任者を登録しておくといった手続きが重要だといえます。

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