今回は、銀行口座の事前調査によって指摘された「金銭の移動」について、ひとつ事例を見ていきます。※本連載では、税理士法人鳥山会計代表・鳥山昌則氏の著書、『マル秘・実録 税務署との交渉術』(現代書林)の中から一部を抜粋し、節税・相続対策・不動産投資などに関する、税務署との交渉・対応術を具体例を用いて紹介します。

指摘された合計1650万円の「金銭の移動」

今年の3月、東京都板橋区在住の方に、相続税の税務調査がありました。その際、問題となったのは次の3点でした。

 

①被相続人からの相続人に対する金銭の移動

②生命保険の生命保険契約に関する権利

③被相続人が負担した葬式費用

 

①については、調査官が事前に口座を調査しており、指摘されて、金銭の移動があったことが明らかになりました。金額としては合計で1650万円。相続人がその金銭を株式投資に使っていたことから、被相続人から相続人に対する立替金として追加で課税されることとなりました。

 

ただし、相続人の記憶の範囲内ということで、小額(50万円まで)の分は除外してもらいました。

先に亡くなった母親の葬儀費用まで…

②については、財産性があると分からなかったが故に、当事務所に報告がなされていなかったと、烏山会計は主張しました。しかし税務署は、相続税の申告前に満期保険金を収受していることから財産性があると分かっていたはずと主張しました。粘り強く交渉をしましたが、結局当方の考えは認められず、むしろ意図的に隠していたものと判断され、重加算税がかけられることになってしまいました。

 

③の葬式費用ですが、先に死亡した母親の葬式費用500万円を今回の被相続人である父親が負担していました。税務署はこれを分割協議書から相続人が負担すべきもので、これも父親の相続人に対する立替金になると主張しました。

 

しかし、分割協議書に記載されていた内容は負債についての分担であり、葬式費用については言及されていませんでした。そのため、当事務所は「慣習として夫が負担することが一般的で、立替金ではない」と反論。結局、これについては当事務所の主張が是認されました。

 

やられっぱなしはありません。

 

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