豊昇龍、「第74代横綱」に昇進
大相撲初場所にて、関脇時代の2023年名古屋場所で初優勝して以来二度目の優勝、大関昇進後では初の優勝を飾った「大関・豊昇龍」。結びの一番で琴桜との大関対決に勝利し、前日14日目まで1差で追っていた金峰山と、千秋楽に金峰山に勝ち星を並べた王鵬との優勝決定巴戦を制した。
大関・豊昇龍は、2024年九州場所千秋楽結びの一番では、大関・琴桜との相星決戦では仕切り線で足を滑らせる形になり優勝を逃したが、琴桜の優勝に準ずる成績になっていた。
豊昇龍の優勝決定後、日本相撲協会の高田川審判部長が、大関豊昇龍の横綱昇進を諮る臨時理事会の招集を八角理事長に要請した。高田川審判部長は「優勝というものを念頭に置いていた。決定戦、本割も素晴らしい内容。今場所すべて前に出ていた。負けた相撲も力負けしていなかった。もともと気持ちが強い力士。引いたりはたいたりする相撲が、特に先場所今場所はなくなった」とコメントしている。
その後、日本相撲協会は1月29日に両国国技館で春場所の番付編成会議と臨時理事会を開き、豊昇龍の第74代横綱昇進を正式決定した。その後、立浪部屋での昇進伝達式で、豊昇龍は口上で大関昇進時と同じ「気魄一閃(きはくいっせん)」という言葉を使用した。
1月31日、約3,500人が見守るなか、新横綱として初の公の場となる東京・明治神宮奉納土俵入りが行われた。土俵入りにかかった時間は1分35秒。22年前の同じ日に行った第68代横綱・朝青龍の1分26秒より落ち着いていた感があった。朝青龍は豊昇龍の叔父にあたる。
叔父・朝青龍の横綱昇進時も、景気は拡張局面
元横綱・朝青龍は、2002年九州場所において14勝1敗で初優勝。綱獲りとなった2003年初場所も14勝1敗の成績で2場所連続優勝を達成し、場所後に第68代横綱へ昇進した。景気面で見ると、2003年の朝青龍の昇進時、景気は第14循環の拡張局面で、豊昇龍の横綱昇進も、同様に景気の第17循環の拡張局面に当たると思われる。
初場所で引退した照ノ富士と入れ替わるように豊昇龍が横綱に昇進し、第63代旭富士が1992初場所を最後に引退し第64代曙が1993年春場所に横綱になるまで生じていた横綱空位は回避された。
2025年は10月にロンドン公演が開催される。海外公演は2005年の米ラスベガス以来20年ぶりで、横綱土俵入りが披露されることは相撲文化発信という点などで影響が大きいと思われる。
豊昇龍はモンゴル出身としては6人目の横綱だ。歴代横綱の出身地としては、1位・北海道(8人)に次ぎ、青森県(6人)に並び2位タイになった。
新横綱の場所で優勝した新横綱の昇進時・優勝時も…
日本の戦後の景気循環・第1循環は1951年から始まっている。景気局面がわかるようになって初めて新横綱に昇進したのは第41代横綱・千代の山で、1951年秋場所で昇進した。
1951年以降、新横綱の場所で優勝した新横綱の昇進時・優勝時の景気は、過去5回すべて拡張局面に当たる。
該当するのは、1961年九州場所の第48代横綱・大鵬(13勝2敗)、1983年秋場所の第59代横綱・隆の里(全勝)、1995年初場所の第65代横綱・貴乃花(13勝2敗)、2017年春場所の第72代横綱・稀勢の里(13勝2敗)、2021年秋場所の第73代横綱・照ノ富士(13勝2敗)。
令和初の横綱となった照ノ富士は、新横綱の2021年秋場所で初日から優勝争いの先頭を走り優勝した。怪我・病気で大関の地位から陥落し、一時は序二段まで番付を下がったものの、そこから復活した。重圧をはねのけ優勝を果たした新横綱から勇気をもらった人も多いだろう。新横綱・豊昇龍が春場所で優勝するかどうか注目される。
春場所は、新横綱・豊昇龍の「初日から2連勝」に期待
大相撲が年6場所制となったのは1958年である。それ以降で横綱に昇進したのは、第45代横綱・初代若乃花以降で、第73代横綱・照ノ富士まで29人。初代若乃花、大鵬、北の富士、千代の富士、貴乃花、稀勢の里など20人が雲竜型、玉の海、隆の里、第3代若乃花、白鵬、照ノ富士など9人が不知火型だ。
雲竜型の新横綱で初日から2連勝したのは11人で、すべて景気拡張局面に当たる。不知火型は8人で、そのうちの6回が景気拡張局面だった。期待された新横綱が順調なスタートを切ると、最終結果に関わらずファンの消費マインドにプラスに働くのだろう。雲竜型の新横綱・豊昇龍の春場所で初日と2日目で2連勝するかどうかも、景気局面のアノマリーとして注目される。
宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか