前回は法人化にあたって法人のタイプをどうするかの選択基準について説明しました。今回は、株式会社と合同会社のいずれを選択するか、その判断基準について見ていきます。

コストと手間は株式会社のほうが高い

前回説明したメリット、デメリットを見れば分かるように、株式会社と合同会社両者においては、税務上の有利・不利の違いは特にありません。したがって、相続税対策という面からは、どちらを選んでもそれほど大きな差が出ることはないでしょう。

 

税務以外の観点から、選択のポイントを挙げるとすれば、コストと手間の面では株式会社のほうが合同会社より負担が多くなるかもしれません。例えば、設立時の費用を見ても、以下のように株式会社のほうが2倍以上かかります。

 

株式会社

 公証人手数料(5万円)

 定款印紙代(4万円〈ただし、電子認承定款の場合は0円〉)

 登録免許税(最低でも15万円)

 合計(最低でも24万円)

 

合同会社

 定款印紙代(4万円)(ただし、電子認承定款の場合は0円)

 登録免許税(最低でも6万円)

 合計(最低でも10万円)

 

また、株式会社は役員の任期が定められていますので、その異動等に伴う役員登記を定期的に行う必要があります。決算の公告も定期に行わなければなりません。そのため会社設立後にも、合同会社よりも費用や手間は多くなるでしょう。

 

なお、登記費用を節約したいのであれば、本来、原則2年ごとである役員改選を10年ごとにすることも可能です。ただし、期間が過ぎて登記を何カ月も懈け怠たいしていると、4~5万円ほどの過料が地方裁判所から代表者個人の住所に送られてきますので、ご注意ください。

 

その点を嫌うのであれば、合同会社を選択することが適切となるかもしれません。

会社の拡大や信用を重視するなら株式会社が無難

他方で、設立後に会社を大きくすることも視野に入れるのであれば、株式の公開(新株発行)による資金調達も可能な株式会社にしておくことが望ましいといえるかもしれません。

 

後の連載で詳述しますが、株式会社から合同会社に変えることも、逆に合同会社から株式会社に変えることも可能です。したがって、会社を設立した後に変えたいと思えば、別のタイプの会社に改めることはできます。

 

迷った場合には、とりあえず一般的に認知度、信用度の高い株式会社にしておくのが無難かもしれません。

本連載は、2014年11月27日刊行の書籍『地主の相続財産は法人化で残す』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地主の相続財産は法人化で残す

地主の相続財産は法人化で残す

小澤 豊,川本 泰正

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税をできるだけ節税したい、遺産分割で家族がもめてほしくない──。地主にとって相続は、頭の痛い問題です。 多くの地主の相続財産は、現金ではなく土地が大半のため、いざ相続になったときに預貯金だけでは相続税を支払…

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