宇宙関連企業の良好な見通しは2025年も継続
■宇宙産業に友好的なトランプ氏が米大統領となったことや、米国企業のファンダメンタルズが堅調なことなどポジティブな要因を背景に、宇宙関連株式は堅調に推移しています。また、宇宙産業は今後もさらに成長することが期待されており、宇宙関連企業の良好な見通しは2025年も継続すると考えています。
■1月20日に米大統領に就任したドナルド・トランプ氏はその就任演説において、火星に星条旗を掲げるという大いなる目標を示したことに加え、強い米軍の再構築や製造業国家となる野心を強調しました。トランプ大統領のもと宇宙ビジネスの市場規模はさらなる拡大が期待されており、2023年の約5,700億米ドルから2030年には1兆米ドル超まで拡大すると予想されています。
■このような環境下、宇宙関連企業の株式に投資を行う当ファンドの基準価額(税引前分配金再投資、以下同じ)は、「為替ヘッジなし」、「為替ヘッジあり」ともに上昇基調となっています。2025年には、グローバルな通信環境の構築に向けた衛星メガ・コンステレーション*の展開が続き、商業宇宙活動の拡大が期待されるなど、2025年の世界の宇宙ビジネスは高い成長を続け、変革を見せると考えています。
(*多数の人工衛星を連携させて一体的に運用するシステムのこと。)
低軌道小型衛星の台頭、加速的に発展を遂げる衛星通信サービス
〈衛星通信サービスの覇権争い〉
■スペースXは世界中をカバーする衛星インターネット通信網の構築を進めており、アマゾン・ドット・コムは、Project Kuiperの進展に伴い、2025年から衛星の生産と打ち上げのペースを増加させる予定です。
■中国では約1万3,000機のGuo wang(国網)コンステレーションの衛星打ち上げが2024年12月に始まるなど、世界で通信衛星による大規模な衛星コンステレーションの計画が持ち上がっています。
〈今後、衛星通信は様々な用途で利用〉
■世界初の静止通信衛星が打ち上げられたのは1963年のことでした。その後、1965年の「インテルサット1号」によって、商業通信衛星の歴史が始まりました。21世紀初頭までは、衛星通信のほとんどが静止衛星によるものでしたが、衛星の小型化や通信の高速化などの技術革新を背景に、低軌道の小型衛星が台頭し、衛星通信への注目が高まっています。
■衛星事業者の間では、静止衛星の強みである大容量通信と、低軌道衛星の強みである低遅延を掛け合わせた衛星通信サービスの提供に向けた取り組みが進められるなど、今後、衛星通信は我々の生活の様々な用途で利用されることが考えられます。
今後、衛星ダイレクト通信サービスの利用拡大
■Starlinkを手掛けるスペースXは、TモバイルUS(米国)、オプタス(豪州)、KDDI(日本)などの通信事業者と提携しており、KDDIは2025年3月に、日本全土をカバーする衛星とスマートフォンの直接通信サービスを提供開始する予定です。今後、通信事業者と衛星事業者のパートナーシップによる取引は増加することが考えられます。
■モバイル端末を用いて衛星通信網と直接通信を行う(Direct to Device/以下、D2D)通信の市場規模は、今後拡大していくことが見込まれています。
トピック:米防衛関連技術企業のパランティア・テクノロジーズ
〈パランティア・テクノロジーズ(米国)〉
■同社は2003年にオンライン決済企業ペイパルの創業者でもあるピーター・ティール氏らによって設立されました。現在、米軍、国防総省、FBI(連邦捜査局)、CIA(中央情報局)のほか、同盟国の軍や情報機関を顧客とし、大企業向けに人工知能(AI)を駆使したビッグデータ解析のソフトウェアを手掛けています。
〈創業者のピーター・ティール氏〉
■シリコンバレーの師匠というべき存在と言われ、オンライン決済企業ペイパルを創業し、YouTube、LinkedIn、テスラなどの誕生に貢献。2003年に同社を設立。
■2016年は、ドナルド・トランプ氏の選挙キャンペーンに125万米ドルを拠出し、共和党全国大会で支持を表明。当選後には、トランプの政権移行チームに加わりました。
■ペイパル在籍時に、不正送金を見抜く技術を開発し、その技術をテロ対策へ応用できないかと考えたことが設立の背景にあります。
〈同社を支える2つの事業「GOTHAM」と「FOUNDRY」〉
■同社の事業には、主に政府や警察などの公共向けのソフトウェアである「GOTHAM」と、金融業、製造業、製薬業、自動車業などの民間企業向けの「FOUNDRY」があります。
※出所:各種資料を基に東京海上アセットマネジメント作成
※上記に記載の企業は、YouTube、LinkedIn以外、2024年12月末時点で上場しています。
〈ビン・ラディン発見に貢献〉
■2011年、国際テロ組織アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者の潜伏先を突き止めた際もパランティアの技術が活用されたといわれます。
■同社のAI軍事支援システムでは、画面に地図が映され、「標的」となる軍部隊が青い枠で示されます。衛星画像や機密情報など膨大なデータから、注目すべき標的をAIが指揮官に提示します。
今後の見通し
⇒2025年は世界の宇宙ビジネスが高い成長を続け、イノベーションや宇宙技術の日常生活での活用が進む飛躍の年になる
■再生可能ロケットの技術的進歩や打ち上げ費用の低下、衛星、特に低軌道コンステレーションの普及が宇宙へのアクセスを普遍化するとみています。これらの進歩は、宇宙ビジネスにおけるコスト障壁を低減するだけではなく、5Gや災害マネジメントのための地球観測のような新しい分野の応用へ広がっていくと考えられ、2025年は世界の宇宙ビジネスが高い成長を続け、イノベーションや宇宙技術の日常生活での活用が進む飛躍の年になるとみています。
■高度な衛星システム、ロボット工学、ビッグデータ、地球観測、GPSナビゲーションなどの宇宙ビジネスは既に企業で手掛けられており、2024年に完全には実現しなかった宇宙交通管理*、宇宙デブリ監視、深宇宙探査、宇宙旅行、小惑星採掘などの分野は、将来の成長分野として大きな可能性を秘めていると考えています。
(*人工衛星の打上げから運用終了・廃棄まで一連の宇宙利用の安全性を確保するための取り組み。)
■また、量子コンピューティングが宇宙ビジネスに大きな変革をもたらす可能性に対して我々は注目しています。量子コンピューティングの技術進歩により、大規模なデータ処理、複雑な計算処理、原子レベルでの素材のシミュレーションと設計が可能になり、過酷な宇宙環境に適した新素材の発見の進展が見込まれます。量子コンピューティングの将来的な利益余地は非常に大きく、宇宙ビジネスの変革へのカギとなり得ると思います。
■リスクとしては、トランプ新政権の予期せぬ政策発表により、特に地政学リスクの高まりや世界のサプライ・チェーンの混乱等によって、市場のボラティリティが高まる点が挙げられます。しかし、多くの宇宙関連企業が市場予想を上回る四半期の利益や売上高を発表するなど企業業績は底堅く推移すると予想します。
■商業宇宙活動の拡大等を背景に、長期的な成長が期待できる宇宙関連企業に対してポジティブにみています。
東京海上アセットマネジメント
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『高成長を続ける「宇宙ビジネス」…2025年は“飛躍の年”に【解説:東京海上アセットマネジメント】』を参照)。
※東京海上アセットマネジメントは「東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし/為替ヘッジあり)」を運用しています。宇宙関連企業の株式等の運用は「ヴォヤ・インベストメント・マネジメント・カンパニー・エルエルシー(ヴォヤIM)」が行います。
※上記は個別銘柄への投資を推奨するものではありません。また、今後の当ファンドへの組み入れを保証するものではありません。
※上記は過去の実績および将来の予想であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
※上記は資料作成日時点におけるヴォヤIMの考える今後の見通しであり、その内容は、将来予告なく変更されることがあります。
※本記事は東京海上アセットマネジメントのファンドレポートの一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が文章を一部改変しております。
※全文及びファンドのリスクや概要は東京海上アセットマネジメントのレポートをご確認ください。