成長期待が高まる「宇宙ビジネス」
■スペースX創業者イーロン・マスク氏、アマゾン・ドット・コムおよびブルーオリジン創業者ジェフ・ベゾス氏、ヴァージン・グループ創業者リチャード・ブランソン氏など世界の大富豪が将来的な商機をつかむために巨額の資金を投じ、宇宙に挑戦しています。宇宙ビジネスは国家主導の時代から、民間主導の新時代へと移行し市場も拡大しており、先行者利益が期待できる市場といえます。
■宇宙ビジネスで先行するマスク氏の宇宙事業は、ロケット打ち上げや衛星通信事業を収益源に売上が伸び好調といわれており、今後、宇宙領域を活用した多様なビジネス展開を目指しています。一方、ベゾス氏は2024年12月、ニューヨーク・タイムズ紙のイベント ディールブック・サミットで、宇宙開発企業ブルーオリジンがいつかアマゾンよりも大きな会社になると信じ、「これまで携わったなかで最高のビジネスになると思うが、それには時間がかかるだろう」と語っています。
■5G衛星通信の市場規模の拡大が見込まれるなど、宇宙ビジネスのさらなる成長期待が高まっており、世界の大富豪は宇宙ビジネスを有望な成長市場とみており、将来的な商機をつかむために、宇宙ビジネスに積極的に投資していると考えられます。
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【スペースXの主な既存事業および計画】
●打ち上げ輸送サービス「ファルコン9、ファルコンヘビー」
同社の主力ロケット「ファルコン9」と大型ロケット「ファルコンヘビー」で、衛星等の打ち上げ輸送サービスを提供。
●貨物・有人宇宙船サービス(ドラゴン)
無人補給船「カーゴドラゴン」で貨物輸送サービスを行い、有人宇宙船「クルードラゴン」で有人輸送サービスを提供。
●衛星通信サービス「Starlink」
世界最大の衛星通信網。世界100ヵ国以上で利用可能、加入者数は460万人超(2024年末)。
●大型宇宙船「スターシップ」
月や火星への有人飛行を目指す宇宙船で、現在開発中。
【ブルーオリジンの主な既存事業および計画】
●有人宇宙飛行サービス「ニューシェパード」
完全再利用型ロケット「ニューシェパード」で、準軌道への有人宇宙飛行サービスを提供。
●大型ロケット「ニューグレン」
衛星や宇宙船の打ち上げを目的として、再利用可能な大型ロケットを開発中。低軌道等への輸送サービスの提供を目指す。
●商業宇宙ステーション「オービタル・リーフ」
同社が開発を主導する商業宇宙ステーション。NASAの支援を受けながら開発が進行中で、2027年に運用開始を目指す。
※衛星通信「Project Kuiper」はアマゾン・ドット・コムが推進。
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出所:BIS Research、Statista、各種資料を基に東京海上アセットマネジメント作成。
※上記に記載の企業は、スペースXとブルーオリジン以外、2025年1月末時点で上場しています。
各国政府の宇宙予算も増加基調、ここ10年間で約3倍に拡大
■近年、宇宙関連事業は民間による大規模な投資だけでなく、各国政府の宇宙予算によっても支えられており、世界の宇宙開発プログラムに対する政府支出は、2014年から2024年の10年間で約3倍に拡大しています。なかでも、米国は宇宙開発に巨額の国家予算を投じています。スペースX創業者マスク氏が「政府効率化省」トップに起用され、NASA次期長官にはマスク氏と関係の深い起業家のジャレッド・アイザックマン氏が指名されており、今後、宇宙産業先進国である米国の宇宙政策が注目されます。
AIソフトの力強い需要を背景に上昇する「パランティア」
パランティア・テクノロジーズ(米国)は、米軍、国防総省、FBI(連邦捜査局)、CIA(中央情報局)といった機関および大企業向けにビッグデータの分析・解析を行っているデータ分析企業です。
<注目ポイント>
■2月3日に発表された2024年12月期決算は市場予想を上回り、株価は大きく上昇しました。アレックス・カープ最高経営責任者(CEO)は同社のAIソフトに対する需要について、依然として内部成長が見込めると指摘しており、2025年も強い成長が続く見通しです。
■米国の国防予算の見直しに関する一部報道を受け、防衛関連需要に対する懸念が広がり、2月19日の同社株式は約10%下落し、その後も不安定な値動きとなっています(2月24日時点)。
■ヴォヤIMでは、同社が政府の効率化を達成するために重要な役割を果たしており、国防総省においても同社のソフトウェアがこれまでも大幅な費用の削減に貢献してきたことから、既存契約の終了や新規契約の獲得が滞ることにはならないとみており、今後も同社および防衛ソフトウェア関連企業は成長を続けると考えています。
楽天モバイルと提携するASTスペースモバイル
ASTスペースモバイル(米国)は、スマートフォンから衛星に直接接続可能なセルラーブロードバンドネットワークを提供する衛星通信事業者です。楽天モバイルと共同で、衛星と携帯電話の直接通信によるモバイル・ブロードバンド通信サービスを日本国内で2026年内に提供を目指す計画を発表しました。
<注目ポイント>
■同社は、米通信大手AT&Tや英通信大手Vodafoneなど45社以上のモバイルネットワーク事業者とパートナーシップを結んでいます。
■2024年9月に衛星とスマートフォンを直接通信するサービスを担う通信衛星「ブルーバード」5基を打ち上げ、衛星コンステレーション(*1)構築を進めており、今後、中長期にわたって収益拡大が期待されます。
(*1)多数の人工衛星を連携させる運用手法。通信範囲を補い合い、全地球的な交信を可能にすることが期待されています。
日本版GPS衛星は2026年度に7基体制へ、測位の他国頼み脱却
■日本の準天頂衛星「みちびき6号機」は2月2日に、大型基幹ロケット「H3」で打ち上げられました。日本政府は単独で衛星測位が実現できる体制の構築を目指しており、2026年度に「みちびき」のみで測位が可能となる7基体制が整う予定です。7基体制による安定した高精度測位が実現すれば、車の自動運転やスマート農業等、さまざまな分野での活用を後押しします。
■世界の全地球航法衛星システム(GNSS)の市場規模は全地球航法衛星システム(GNSS)機器およびサービスの売上が拡大し、2033年には約5,800億ユーロ(約93兆円*2)に達すると予想されています。
※準天頂衛星は地球を周回する一般的な人工衛星とは異なり、特定の地域の上空に長時間留まる軌道をとるもの。
※全地球航法衛星システム(GNSS)は衛星測位システムの総称。
(*2)1ユーロ=160.36円(2025年1月末時点)で円換算。
東京海上アセットマネジメント
※当レポートの閲覧にあたっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『宇宙ビジネスは「民間主導」の時代へ 先行者利益が期待できる新成長産業【解説:東京海上アセットマネジメント】』を参照)。
※東京海上アセットマネジメントは「東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし/為替ヘッジあり)」を運用しています。宇宙関連企業の株式等の運用は「ヴォヤ・インベストメント・マネジメント・カンパニー・エルエルシー(ヴォヤIM)」が行います。
※上記は個別銘柄への投資を推奨するものではありません。また、今後の当ファンドへの組み入れを保証するものではありません。
※上記は過去の実績および将来の予想であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
※上記は資料作成日時点におけるヴォヤIMの考える今後の見通しであり、その内容は、将来予告なく変更されることがあります。
※本記事は東京海上アセットマネジメントのファンドレポートの一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が文章を一部改変しております。
※全文及びファンドのリスクや概要は東京海上アセットマネジメントのレポートをご確認ください。
