●年明け以降の日本株について、個人や海外投資家などの投資部門別に、買い手と売り手を探る。
●現物を1兆円超買い越しているのは個人と事業法人、海外投資家は先物で1兆円超を売り越す。
●個人と事業法人の買いが日本株の下支えに、この先トランプ関税と海外投資家の動向に要注目。
年明け以降の日本株について、個人や海外投資家などの投資部門別に、買い手と売り手を探る
今回のレポートでは、日本取引所グループが公表しているデータを基に、「個人」、「海外投資家」、「投資信託」、「事業法人」、「信託銀行」、「自己(証券会社の自己勘定)」の6部門について、年明け以降の日本株の売買状況を検証し、主な買い手と売り手を探ります。検証期間は、2025年1月第1週(1月6日~10日)から2月第1週(2月3日~7日)までの5週間です。
各週における現物および先物の売買代金差額を累計し、6つの投資部門別にまとめたものが図表1です。なお、現物は東京・名古屋2市場の売買代金の差額合計、先物は日経225先物、日経225mini、TOPIX先物、ミニTOPIX先物の売買代金の差額合計としています。以下、どの投資部門が日本株を買い越しているか、あるいは売り越しているか、具体的に確認していきます。

現物を1兆円超買い越しているのは個人と事業法人、海外投資家は先物で1兆円超を売り越す
はじめに、個人の動向からみていきます。個人は年明け以降の5週累計で、現物を1兆3,521億円買い越し、先物も1,209億円買い越しています。合計の買い越し額は1兆4,730億円と、6つの投資部門のなかでは最も大きく日本株を買い越しています。次に、海外投資家の動きをみると、現物は1,509億円の買い越し、先物は1兆8,090億円の売り越しとなり、合計1兆6,581億円の売り越しは6部門のなかで最大です。
投資信託と事業法人、信託銀行の現物と先物の合計額は、順に576億円の売り越し、1兆1,909億円の買い越し、8,795億円の売り越しでした。投資信託は売りと買いがほぼ拮抗しており、事業法人の買い越しは主に自社株買い、信託銀行の売り越しは主に年金ポートフォリオのリバランスと推測されます。なお、事業法人は昨年1年間で日本株を7兆8,786億円買い越しており、年明け以降も安定した買い手となっています。
個人と事業法人の買いが日本株の下支えに、この先トランプ関税と海外投資家の動向に要注目
最後に、自己を確認すると、現物と先物の合計額は3,749億円の売り越しですが、現物の売り越し額は1兆8,770億円、先物の買い越し額は1兆5,021億円と、それぞれかなり大きな金額となっています。前述の海外投資家の動向(1兆円超の先物の売り越し)を踏まえると、裁定売り取引の影響とも考えられますが、年明け以降の裁定残高に大きな変化はみられず(図表2)、それ以外の何かしらの要因で売買金額が膨らんだものと考えられます。

年明け以降、個人と事業法人による各1兆円超の現物の買い越しは、日本株を支える1つの大きな要因と思われますが、海外投資家の現物の買い越し額は相対的に小さく、先物は大幅な売り越しとなっています。この先、トランプ関税の詳細が明らかになり、日本への影響に対する過度な懸念が和らぐ展開となれば、海外投資家の現物の買い増しや、先物の買い戻しも期待できるため、引き続きトランプ関税と海外投資家の動向が注目されます。
(2025年2月20日)
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『年明け以降の日本株の「買い手」と「売り手」【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト