中国の重点政策の一つである「一帯一路」構想を解説している本連載。最終回は、引き続きチャンスを狙う各地方政府の思惑をご紹介します。

陸路・海路ともに起点が定まらず

両シルクロードの起点をどう考えるかについての議論が喧しい。陸路については、起点が西安(陝西)か洛陽(河南)かという以前からの論争が再燃している。河南は「東漢(後漢)になって、商業の中心は長安から洛陽に移り、シルクロードも東に延伸された」とする一方、陝西は「最も栄えた西漢(前漢)と唐の時代の起点が西安で、真の歴史上の起点は西安」としている。

 

その後、起点論争は西安と洛陽に止まらず、重慶、鄭州、連雲港(江蘇省北部、長江デルタ地区)といった市が、次々に起点としての‘正当性’を主張している。

 

海上については、連雲港が海上の起点になると同時に、陸路の東側の橋頭堡としても地理的に最適と主張、必ずしも構想の中核にはない江西は、歴史的に同省内の景徳鎮の陶器が海上ルートの主要商品だったことを理由に、海上の起点になる‘資格’があると主張している。

各地に溢れる経済・文化の‘中心’計画

すでに自由貿易区として稼働している上海に加え、天津、広東、福建も構想の関係で準備が加速、2015年3月全人代後の中共中央政治局会議で全体計画案が承認された。その他、この機会をとらえ、重慶、成都、新彊、陝西、連雲港等、多くが自由貿易区の検討を進めている。

 

こうした地方の動きは、構想が地域活性化の起爆剤になる可能性を示唆するものだが、同時に、中央の狙いとは別に、その性格があいまいになっていく危険性も指摘されている。

 

行動文書は新彊、福建を各々陸路、海上の核心区と位置付けてはいるが、18の省に言及した総花的な文言となっている。起草した発展改革委は、明記されていない地域が構想に含まれないということでは全くないこと、すべての省区が実施計画を策定し、中央計画との連結作業を遅くとも10月まで行う旨、わざわざ発言している(2015年4月10日付一財網)。

 

2015年9月時点で、14の省市区が実施計画を策定済み、地元報道によると、これら計画で合計30以上に及ぶ、貿易、金融、物流、文化等の‘中心’の設置が提唱されている。例えば、前回言及した陝西の‘6中心’の他、最も早く計画を策定した広東は‘経済貿易交流中心’、福建は‘中国―東盟海洋合作中心’、黒龍江は‘国際物流中心’等々である(2015年8月17日付人民網)。構想を巡っての中央と地方、また地方間の調整も注目点だろう。

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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