中国の重点政策の一つである「一帯一路」構想を解説している本連載。第6回は、第二次世界大戦後のアメリカが推し進めた「マーシャルプラン」と比較して考察します。

「マーシャルプラン」と「真珠の首飾り」の連想

米国等では中国の「一帯一路」構想は、第2次世界大戦後に米国が推し進めた「マーシャルプラン」を連想させるとの指摘がある。躍進する大国がその経済力を背景に、外交安全保障政策を確かなものにするとともに、自らの国内経済への好影響も期待する政策という点で、確かに類似性がある。

 

また特に海上構想は、かつて米国で展開されたString of Pearls(真珠の首飾り)の議論も思い起こさせる。これは2006年、米国のシンクタンクが米政府の委託を受けて作成した報告書の中で使用した中国の海洋戦略を指す表現である。

 

 

南シナ海、マラッカ海峡、インド洋、ペルシャ湾の港や空港へのアクセス向上を通じて、地政的影響力を強化することを狙った、香港からポートスーダンまで延びる中国の海上交通戦略(具体的には、スリランカやパキスタンの港湾整備への投資等)を、米国(そして特に、周辺国ではインド)はこのように称して警戒してきた。

 

2014年2月、スリランカ外相が訪中した際に、海上構想について両国が協力することが確認され、スリランカも含まれることが明らかになったことから、「真珠の首飾り」の名前を変えたものに他ならないとの認識が、米国の学者らから出ている。それによれば、「真珠の首飾り」は、米等西側諸国が中国の軍事戦略を議論する際に使用してきたため、中国はこの表現を好まず、「海上シルクロード」を自ら提唱することによって、中国から積極的にその戦略を宣伝しようとし始めたということになる。

西側の見方に対する中国サイドの「反論」とは?

こうした西側の見方に対し、中国学者らから次のような反論が出されている。「マーシャルプラン」との類似性に関しては、意図的に国際秩序を変革しようとするものでないこと、同プランのように共産主義国家を排除して国際的覇権を求めるものではなく、開かれた構想であること、また、そもそも同プランを推し進めた頃の米国に比べ、中国はなお発展途上経済で、国際的に大国としての地位を確立していない点が大きく異なるというわけだ(2015年1月23日付社会科学網等)。

 

またその目的は、あくまでインフラ整備などを通じてコネクティビティを強化するという経済的なもので、地政的手段ではないこと(外交部副部長、2015年3月21日付一財網)、経済的に相互に繁栄することが、政治安全保障面での地域の安定にもつながるというというロジックが展開されている(2014年8月19日付人民網)。

 

清華大学現代国際関係研究所長は、「欧米が構想は中国のGo West Policyに他ならないと主張するために、中国の新たな拡張政策を示すものとの誤解を生じさせている」(2014年2月27日付21 Century Business Heraldでのインタビュー)としている。

 

新華社通信は、そのシルクロードウェブサイトで、鉄道や港のインフラ整備を中国が援助することによって、このループ内の地域のコネクティビティを高めることに加え、より高度な貿易ネットワークを構築し、資本の移動や金融・通貨の面でも円滑化を図り、域内の全ての国・地域が互いに利益を享受し経済的に共存できるようにすることが目指されているとしている。

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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