中国の重点政策の一つである「一帯一路」構想を解説している本連載。第5回は、中国が中心となって立ち上げたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の、この構想における役割について見ていきます。

35年間にわたる長期的な計画

「一帯一路」構想の性格について、2014年4月23日付人民論壇網は、伝統的な地域協力モデルのように、統一的な関税政策を導入し、その後、ある種の超国家的な枠組みを設立するという高度な目標を持つものではなく、より実務的かつ弾力的な経済協力を目指すもので、既存の地域協力枠組みに代替するものではないとの専門家の見方を掲載している。

 

タイムスケジュールについては、14年6月末、人民大学重陽金融研究所が、関係国の学者を招いたフォーラムで、2014-16年を動員段階(検討、関係者の認識の共有)、16-21年を戦略計画期(主要関係国が政策、インフラ建設、貿易等課題毎に検討チームを組成し、各国間での協調の枠組みを構築)、21-49年を戦略実施期(国内的には担当部局等体制整備、対外的には国際機関等との連携強化を通じ、インフラ建設等全面的に実施)という35年にわたる3段階案を提示した。

 

現在、多くの学者は、構想は長期的な性格を持つものとしつつ、2015年が実施元年になるとの見方を示している(2015年3月19日付社会科学報)。行動文書は具体的なスケジュールを示していないが、既に、向こう2,3年に契約締結、着工する詳細なプロジェクトリストがあり、各地方政府が閲覧しているという。

 

分野は鉄道、高速道路、エネルギー、情報、工業団地等、また地域としては当面、カザフスタン、キルギスタン、タジクスタン等の周辺国家に集中する(2015年2015年4月6日付華夏時報)。まず3月末には、カザフスタンとの間で、総額236億ドルに及ぶ高速道路、都市鉄道、水力・風力発電等インフラ建設での協力で合意、今後、構想に基づく他国との協力のモデルになると見られている。

AIIB参加の欧州諸国の出方が未知数

これらプロジェクトを資金面で支えるため、中国政府は自国の銀行がルートに位置する諸国へ融資することを奨励するとともに、新たに設立されるアジアインフラ投資銀行(AIIB、資本金1,000億ドル)、すでに2014年12月、当初100億ドル規模(将来的には400億ドル)で発足したシルクロード基金がある(注)。15年2月には、発展改革委員会を事務局として構想の実施を主導する指導チームも立ち上げている。構想の進捗は予想以上に速いかもしれない。

 

AIIBに関しては3月、欧州各国が参加を表明、「提唱した中国にとっては‘大満貫(グランドスラム)’」とする論調が大勢だが(2015年3月19日付第一財経日報社説)、「欧州の参加は、中国を‘管理’しようとするもので、喜んでばかりはいられない」といった警戒も垣間見える(同3月17日付一財網)。いずれにせよ、AIIBに参加する西側先進諸国が構想にどう関与してくるか、新たな‘変数’になったとの認識がある。

 

(注)行動文書では、資金面での中国の積極的行動としてAIIBや基金ニ加え、2014年11月のSCOの会議で提唱した中国-欧亜経済協力基金の機能強化、人民元決済の拠点や2国間通貨スワップ取極の拡充にも言及している。また財政部長は、世界銀行やアジア開発銀行が‘一帯一路’プロジェクトを支援することも歓迎すると述べている(2015年3月21日付環球時報)。

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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