1月CPIは、FRBの利下げに対する慎重な姿勢を裏付ける結果に
米労働省が7日に公表した2025年1月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数(事業所調査)は前月差+14.3万人と、市場予想(同+17.5万人)を下回りました(図表1)。
雇用の増加ペースは2024年10月に米南部を襲ったハリケーンやボーイング社のストライキなどの影響により大きく減速した後、11月、12月は加速したものの、1月には反動増が一巡した格好となりました。もっとも、過去2ヵ月分(11月、12月)が計+10.0万人と大幅に上方修正されたこと、1月はカリフォルニアの山火事や寒波が雇用の抑制要因になったことを考慮すると、労働市場は引き続き底堅さを維持していると考えられます。6ヵ月移動平均でも、直近は17.8万件と12月時点の16.9万件から雇用の増勢は加速しています。
1月の失業率(家計調査)は、米景気後退への懸念が高まった昨年半ば以降の上昇を巻き戻す低下(2024年5月:4.0%→11月:4.2%→2025年1月:4.0%)となりました。1月の平均時給は前月比+0.5%と、市場予想(同+0.3%)を大きく上回りました(図表2)。
もっとも、山火事や寒波の影響により労働時間が減少した結果、平均時給が機械的に押し上げられたとみられるため、1月分については多少割り引いてみる必要があります。
1月の雇用統計は、山火事や寒波といった特殊要因を除けば全体的に良好であり、FRBが忍耐強く利下げを待つことを後押しする結果と言えます。今後は、移民政策の強化や政府部門のコストカット(一部解雇や新規雇用の停止)の影響が労働市場にどのような影響を及ぼすのか、週次で公表される新規失業保険申請件数などの結果を見極める時間帯となります。
米労働省が公表した2025年1月の消費者物価指数(以下、CPI)は前月比+0.50%、変動の大きい食料品及びエネルギーを除くコアCPIは前月比+0.45%とともに市場予想(それぞれ0.3%)を上回る結果となりました(図表3)。
コアCPIについて、FRBが注目する基調的なモメンタムを確認すると、3ヵ月前比年率値(2024年12月:+3.10%→2025年1月:+3.85%)、6ヵ月前比年率(12月:+3.14%→1月:+3.67%)ともに加速した格好となりました。
コアCPIのうち、コア財は前月比+0.28%と2023年5月以来の高い伸びを示しました(図表4)。価格上昇の大部分は、中古車(前月比+2.19%)や自動車部品(同+0.79%)などの上昇に起因するものであり、トランプ政権下で想定される関税賦課を前に駆け込み需要が価格を押し上げた可能性があります。
コアサービスについては前月比+0.51%と12月(同+0.26%)から伸びが急拡大しました。家賃を除くサービス、いわゆるスーパーコア(12月:前月比+0.20%→1月:同+0.76%)が上振れたことがコアサービスの押し上げに寄与しました。スーパーコアのうち、宿泊料(前月比+1.43%)や航空運賃(同+1.24%)、自動車保険(同+1.99%)が高い伸びを示しており、カリフォルニアの山火事に起因している可能性があります。
1月のCPIは、基調的なインフレ圧力が想定以上に強い可能性に加え、山火事の影響による需要増や関税賦課前の駆け込み需要が生じている可能性を示唆する結果となりました。パウエルFRB議長は12日、下院金融サービス委員会の議会証言で、今回のCPIについて「FRBの目標に近いところだが、達していない」「政策を維持し、インフレの持続的な進展の更なる証拠を待つ」と、引き続き利下げに慎重な考えを示しました。1月のFOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は利下げの条件として指摘した、「インフレ鈍化の進展」を確認できなかったことを踏まえると、労働市場が冷え込まない限り、年前半の利下げのハードルは高まったと言えます。なお、FF金利先物が織り込む政策金利予想(14日執筆時点)をみると、年前半は政策金利の据え置きが見込まれています(図表5)。
東京海上アセットマネジメント
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…2月第2週の「米国経済」の動き』を参照)。
※本記事は東京海上アセットマネジメントの「TMAMマーケットウィークリー」の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が文章を一部改変しております。
※全文は「TMAMマーケットウィークリー」をご確認ください。
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