恨みます…年収700万円の53歳サラリーマン、亡き父が遺した「実家と預金1,000万円」を母に譲った2年後、税務調査で〈年収の倍以上の追徴税〉を課された“まさかの理由”【税理士が警告】

恨みます…年収700万円の53歳サラリーマン、亡き父が遺した「実家と預金1,000万円」を母に譲った2年後、税務調査で〈年収の倍以上の追徴税〉を課された“まさかの理由”【税理士が警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

税務調査といえば、個人事業主や富裕層といった一部の人以外には無関係に聞こえるかもしれません。しかし、実際には誰もが税務調査の対象で、さらに「資産を持っている」ことに無自覚であるほど、税務調査官に狙われてしまうのです。都内の企業に勤めるAさん(55歳)の事例をもとに、現役税理士・CFPの宮路幸人氏が「相続税申告時の落とし穴」について解説します。

課税「される形見」と「されない形見」の差

Aさん自身、高級腕時計のブランドについて知っているのはロレックスぐらいのもので、その他の腕時計については詳しい知識を持ち合わせていませんでした。また形見が課税財産に含まれるという認識がなかったといいます。

 

しかし、相続税の課税対象は、「金銭的価値があるすべてのもの」です。つまり、高級腕時計だけでなく、自宅のなかにある家財などもすべて相続税の課税対象財産となりえます。

 

自動車や宝石、掛け軸など、家財道具1つあたり5万円を超えている場合には、個別に評価して「相続税財産」として加える必要があります。

 

なお、家財のなかに1点あたり高価なものがない場合には、まとめて「家庭用財産一式10万円」などとして申告するケースが多いです。

 

国内外問わず腕時計をコレクションしている人は多く、なかには値上がりの売却益目当てに投資目的として購入する人もいます。

 

2019年には、世界で1本しかないパテックフィリップが、約34億円という過去最高額で落札されたこともあります。これは極端な例としても、高級腕時計には財産価値があると考えたほうがいいでしょう。

税務調査の際は“雑談”に要注意

税務調査は通常朝10時から始まりますが、到着していきなり「あれを見せろ」「これを見せろ」とはいいません。最初の1時間ほどは、故人の人となりや経歴や趣味等についての雑談から始まることが多いです。

 

しかし、この税務調査官との“雑談”は要注意です。筆者の経験上、優秀な調査官ほど人当たりが柔らかく、聞き上手な人が多い印象があります。

 

今回のケースでもAさんの身に着けていた腕時計を褒めるところから、思わぬ追徴課税となりました。必要なことはもちろん答えなければいけませんが、積極的なおしゃべりには気をつけたほうがよいでしょう。申告漏れした財産については相続税の本税のほか、ペナルティとして過少申告加算税と延滞税が課されます。

 

今回の場合、Aさんは申告漏れが指摘されたため、泣く泣く形見の一部を売却し、相続税の追徴税額の納付にあてることとなりました。

 

財務省は「個人の財産」への監視を強めている?

今回のケースのように形見の腕時計だと思って申告が漏れた場合、本税のほか各種加算税や延滞税なども課されることとなってしまいます。

 

相続された動産で金銭的価値がありそうなものを保有している場合、その金銭的価値を見積ったうえで申告する必要があります。

 

余計な詮索を受けずに済むよう、保有財産の一覧表などを作成・保管しておくことをおすすめします。

 

 

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

 

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