課税「される形見」と「されない形見」の差
Aさん自身、高級腕時計のブランドについて知っているのはロレックスぐらいのもので、その他の腕時計については詳しい知識を持ち合わせていませんでした。また形見が課税財産に含まれるという認識がなかったといいます。
しかし、相続税の課税対象は、「金銭的価値があるすべてのもの」です。つまり、高級腕時計だけでなく、自宅のなかにある家財などもすべて相続税の課税対象財産となりえます。
自動車や宝石、掛け軸など、家財道具1つあたり5万円を超えている場合には、個別に評価して「相続税財産」として加える必要があります。
なお、家財のなかに1点あたり高価なものがない場合には、まとめて「家庭用財産一式10万円」などとして申告するケースが多いです。
国内外問わず腕時計をコレクションしている人は多く、なかには値上がりの売却益目当てに投資目的として購入する人もいます。
2019年には、世界で1本しかないパテックフィリップが、約34億円という過去最高額で落札されたこともあります。これは極端な例としても、高級腕時計には財産価値があると考えたほうがいいでしょう。
税務調査の際は“雑談”に要注意
税務調査は通常朝10時から始まりますが、到着していきなり「あれを見せろ」「これを見せろ」とはいいません。最初の1時間ほどは、故人の人となりや経歴や趣味等についての雑談から始まることが多いです。
しかし、この税務調査官との“雑談”は要注意です。筆者の経験上、優秀な調査官ほど人当たりが柔らかく、聞き上手な人が多い印象があります。
今回のケースでもAさんの身に着けていた腕時計を褒めるところから、思わぬ追徴課税となりました。必要なことはもちろん答えなければいけませんが、積極的なおしゃべりには気をつけたほうがよいでしょう。申告漏れした財産については相続税の本税のほか、ペナルティとして過少申告加算税と延滞税が課されます。
今回の場合、Aさんは申告漏れが指摘されたため、泣く泣く形見の一部を売却し、相続税の追徴税額の納付にあてることとなりました。
財務省は「個人の財産」への監視を強めている?
今回のケースのように形見の腕時計だと思って申告が漏れた場合、本税のほか各種加算税や延滞税なども課されることとなってしまいます。
相続された動産で金銭的価値がありそうなものを保有している場合、その金銭的価値を見積ったうえで申告する必要があります。
余計な詮索を受けずに済むよう、保有財産の一覧表などを作成・保管しておくことをおすすめします。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
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