今回は、賃貸物件の価値を引き上げる「隣地」を格安で購入した事例を紹介します。本連載は、株式会社タカ・コーポレーション代表取締役、中村 隆氏の著書『続・究極の不動産投資術』(株式会社タカ・コーポレーション)の中から一部を抜粋し、不動産の購入から、入居者募集、物件の維持管理まで、「究極の不動産投資術」の具体的な内容を解説します。

国道への出入りを阻む「他人の土地」

誰も語らない交渉術を公開しましょう。

 

福島県福島市の幹線道路沿いに義母が200坪の土地を所有しており、その土地の上に店舗を建て貸していました。以前はその店舗に寿司屋がテナントとして入っていて毎月15万円の家賃収入がありましたが、2007年5月にテナントが空室になってしまいました。そこで義母から私になんとかしてほしいと依頼がありました。

 

私がその依頼を受けてまずしたことは、ヤフーを使って不動産で福島市の店舗を検索することでした。そうしたら画面上にいろいろな店舗が載っていました。義母の所有しているものは店舗面積175㎡と土地面積670㎡くらいありました。以前は15万円で貸していたと聞いていましたが、最初は強気の23万円で募集したところ3カ月の短期でテナントが決まりました。その後、「値段を下げてくれれば借りたい」というテナントが現れました。2008年3月にそのテナントと月16万5000円で3年契約で約定しました。

 

その後一つ問題があることがわかりました。この店舗の立地は高速道路から出て13号線を飯坂温泉に向かっていくとその沿線上にあり、車で行くには最高に良い場所でした。しかし13号線から店舗に入る入口が二つあり、そのうちの一つが他人の土地だったのです。その土地の面積は89㎡ありました。契約書にはこの89㎡の土地は使わない旨の内容を入れて契約しました。

 

義母から管理を任されていましたので義母とタカ・コーポレーションとの間でサブリース契約を結びました。内容は義母がタカ・コーポレーションに毎月13万円で賃貸するというものでした。その結果義母は毎月13万円の家賃収入が入り、タカ・コーポレーションは毎月テナントから入る16万5000円から13万円引いた残りの3万5000円が管理料として入る仕組みです。

 

契約時にテナントから敷金として家賃の5カ月分の81万円を預かることができました。私はこの81万円を使って隣の土地を買えないかと考えました。もし買えれば問題が一気に解決できると思ったので早速いろいろ検討してみることにしました。

評価額は405万円でも利益を生まなければ「負債」

まず土地の値段はいくらかを調べました。インターネットで路線価を調べたところ坪15万円でした。27坪で総額405万円という土地の値段がわかりました。81万円では相手は到底納得しないことが予想できました。しかし店舗が決まってそこで使用することを伝えに行く必要がありました。不動産業者が相手に挨拶に行く際に、駄目もとで81万円ではなくきりのいい100万円で譲ってほしいとやんわり伝えてもらいました。

 

後で不動産業者から電話があり「100万円とはあまりにも安すぎる」とご主人はかなり立腹されたと聞きました。それは2008年4月のことでした。

 

その隣の土地は駐車場として使っているのですが、誰も契約者がいないこともわかりました。ということは土地の所有者は毎月駐車場の収入がゼロにもかかわらず毎年3万円の固定資産税を支払っているわけです。私の尺度から言えば、この土地は到底資産と呼べるものではありませんでした。毎年3万円支払わなければならない負債そのものだったのです。したがって相手は使用価値もない土地で毎年3万円の固定資産税を払い続けていて、土地は早く処分したい気持ちがあると判断しました。

 

その後100万円の提示をしたまま放置プレーに徹しました。6月10日に売主の依頼を受けたY不動産からFAXが私のところに入りました。内容は「隣接所有者が代替わりされて価格の折り合いを判断して譲渡したい意向があり、最大限の譲渡価格を坪8万円で全部で216万円の価格を提示いたします」でした。

 

私は土地は13号線沿いにあり確かに便利だが、27坪という半端な土地は私以外にこの世に誰も買う人はいないであろうと考えていました。しかもこの隣の土地を買うと義母の土地の価値も格段に上がることもわかっていました。義母の土地(図表59-1、62-2参照)203坪をこのまま売却すれば買い手もなかなか現れないでしょう。なぜなら利用するのに不便だからです。それを隣の土地(図表63-1参照)を購入すれば道路からの入口が2カ所ある整形地とした立派な土地になるのです。買い手も将来現れることも十分予想でき、価格も今より高くなるでしょう。

 

私はこの土地をタカ・コーポレーションで買うことを決心しました。評価額400万円の土地を無担保で買う意義は十分あると考えました。会社のバランスシートに資産として無担保の土地を89㎡載せて見栄えを良くしたかったのです。そうすれば銀行借入する時に「どうぞこの無担保の土地を担保にしてください」と言えます。

 

そこでY不動産に電話を入れました。「今やっと新しいテナントが決まって隣地は使わないことで賃借人も納得しています。3年契約なので今すぐに慌てて購入しても毎年固定資産税を払うだけになります。そこで売主さんに毎年いくら固定資産税を支払っているのかを聞いてもらえませんでしょうか」と言って電話を置きました。

 

次回に続きます。

 

【図表】

本連載は、2012年3月20日刊行の書籍『続・究極の不動産投資術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

続・究極の不動産投資術

続・究極の不動産投資術

中村 隆

株式会社タカ・コーポレーション

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