〈フィッチ〉〈HSBC〉〈BofA〉グローバルな格付け会社・金融機関による「2025年・フィリピン経済」の動向予測

1月20日週「最新・フィリピン」ニュース

〈フィッチ〉〈HSBC〉〈BofA〉グローバルな格付け会社・金融機関による「2025年・フィリピン経済」の動向予測
写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏がフィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週はグローバルな金融機関が2025年のフィリピンの経済成長をどう見ているのかを中心に解説していきます。

3社とも「高い成長率」を予測も懸念も

世界的な民間格付け会社であるフィッチによる見通しでは、フィリピンの経済成長は金融緩和により加速し、経済成長率は2024年の5.8%から2025年には6.3%に上昇すると予測されています。特に2025年末までに150ベーシスポイントの政策金利引き下げが国内需要を刺激し、経済を後押しするとしています。フィリピン中央銀行(BSP)は2024年に75ベーシスポイントの利下げを行い、さらに緩和を進める意向を示しています。

 

インフレ率は2024年に3.2%とBSPの目標範囲内に収まり、2025年も3.3%と予測されています。これにより民間消費が回復し、経済成長のもう一つの要因になると期待されています。ただし、これはアメリカのドナルド・トランプ次期大統領が関税政策を厳格に実施しないことが前提です。もしこれが実施された場合、成長見通しは下方修正されるリスクがあります。アメリカはフィリピンの主要貿易相手国であり、トランプ氏の提案する関税はフィリピン経済に大きな影響を及ぼす可能性があるのです。

 

また、世界最大級のメガバンクであるHSBCはフィリピンを東南アジアで最も急成長する国のひとつと位置づけており、2025年の成長率を6.3%、2026年には6.7%と予測しています。経済成長の主要因は、堅調な国内消費、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野の成長、デジタルサービスへの投資の増加です。フィリピンはITやBPOサービス、輸出で独自の強みを持ち、これは世界的な貿易不確実性や関税リスクに対するバッファーとなっています。BSPは2025年第3四半期に政策金利を5%に引き下げると見込まれており、インフラ整備も成長を支える重要な要因とされています。

 

さらに、世界最大の金融機関のひとつであるBank of America(BofA)は、トランプ氏の関税政策による貿易ショックに対処するため、フィリピンでは金融政策が重要な役割を果たすと指摘しています。2024年中ごろのコメ輸入関税の引き下げでインフレが抑制されていることや、BSPが外国為替市場の動きに比較的鈍感である点がその理由です。財政赤字がGDPの5%を超えている中で政府支出を大幅に増やす余地が限られており、金融政策に依存する可能性が高いと見られています。

 

総じてフィリピン経済は今後数四半期で改善すると予測されており、特にサービス輸出や海外送金が経済の安定性と回復力に寄与すると考えられています。一方で、アメリカの政策動向や為替リスクが引き続き注意を要する要因となっています。

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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