今回は、財産を「誰が・どれだけ」相続するのかを決めるための手順について見ていきます。※本連載は、池田税務会計事務所の代表税理士の池田俊文氏の著書『50歳からの相続・贈与の本』(駒草出版)の中から一部を抜粋し、大切な家族と財産を守るための相続や贈与に関する法律知識や税金知識を幅広く紹介します。

遺言書がなければ、相続人間で「遺産分割協議」を実施

被相続人が亡くなると、相続人の確定が必要になります。誰がどの財産をどれだけ相続するのかを決める必要があるからです。遺言書があれば、財産は遺言書に基づいて相続人に分けられることになります。

 

遺言書があっても、相続人全員で話し合いがつけば、それに基づいて財産を分けることもできます。遺言書がなければ、相続人の間で話し合って財産を分けることになります。これを、遺産分割協議といいます。

 

遺言書がなく相続人の間で話し合いがつかないときは、民法で決められている相続分(法定相続分といいます)に従って財産を分けることになります。

 

民法で法定相続分を決めているのは、相続人間で話がつかなかった場合で、民法の通りに分割しなさいというわけではありません。できることなら、相続人の間でお互いが納得できるまで話し合いで決めるのが望ましい形といえます。

 

民法では、どのように相続分が決められているかお話ししていきたいと思います。法定相続分は、どの順位の相続人が相続するかで財産の取り分が変わってきます。

 

第一順位の相続人の場合:配偶者が2分の1、子どもが2分の1、子どもが数人いる場合は、2分の1を人数分で分けることになります。

 

第二順位の相続人の場合:配偶者が3分の2、父または母が3分の1、両親とも健在の場合は、3分の1を分け合うことになります。

 

第三順位の相続人の場合:配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1、兄弟姉妹が数人いる場合は、4分の1を人数分で分け合うことになります。

 

代襲相続人の相続分:その上位者が相続しようとした相続分となります。たとえば、孫が相続する場合、被相続人の子どもの相続分をそのまま受け継ぐことになります。

 

【図表 民法で定める相続分】

遺言書があっても「遺留分」は侵せない

●遺言書がある場合

1.財産の配分は被相続人の遺言で自由に分けられる

2.遺留分は侵せない

3.遺言書があっても相続人の間で話し合いで分けることもできる

 

●遺言書がない場合

1.相続人の間で話し合いで決める

2.相続人の間で話し合いで決まらない→民法の規定による

 

司法統計によると、遺産分割で裁判となった割合は遺産5,000万円以上が25%、1,000万円以上~5,000万円以下が43%、1,000万円以下が32%となっています。「我が家は相続財産がないから揉めることはない」ということはありません。ですから、遺言書の重要性が高まっています。

 

ちなみに、5,000万円を超えると相続争いが少なくなる傾向があります。というのは、相続財産が多くなると大抵「遺言書」が遺されているからなのです。

本連載は、2015年12月17日刊行の書籍『50歳からの相続・贈与の本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

50歳からの相続・贈与の本

50歳からの相続・贈与の本

池田 俊文

駒草出版

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