(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●足元の米国経済は潜在成長率近辺の成長ペースに移行しつつあり、インフレは基調的に減速中。

●来年の経済成長率とインフレ率は、今年より鈍化の見通しも、景気の大幅な冷え込みはなかろう。

●利下げは来年3月から半年毎25bp、4回で終了、今回関税引き上げは慎重な判断がなされよう。

足元の米国経済は潜在成長率近辺の成長ペースに移行しつつあり、インフレは基調的に減速中

米連邦準備制度理事会(FRB)は今年、9月にフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げ、金融引き締めを緩和方向に転換しました。その後も11月と12月に25bpの利下げが行われ、金融環境が一段と緩和するなか、個人消費には依然底堅さがみられるものの、労働市場は緩やかに減速しており、米国経済全体では潜在成長率(推定1.8%)近辺の成長ペースに移行しつつあると思われます。

 

一方、物価に目を向けると、個人消費支出(PCE)物価指数では、食品とエネルギーを除くコア指数が9月、10月とやや強めの伸びが続き(順に前月比+0.251%、同+0.262%)、インフレの粘着性が警戒されました。しかしながら、11月は前月比+0.115%に落ち着いたため、粘着性に対する過度な懸念はいったん後退し、インフレは基調的に減速が続いていると考えられます。

来年の経済成長率とインフレ率は、今年より鈍化の見通しも、景気の大幅な冷え込みはなかろう

米国経済の先行きについては、個人消費が引き続き堅調に推移するなか、次期トランプ政権による規制緩和や減税への期待から、家計や企業のセンチメント(心理)の改善が見込まれ、また、緩和的な金融環境を踏まえると、成長ペースが大幅に鈍化する恐れは小さいと思われます。実質GDP成長率の四半期予想は図表1の通りで、2024年は前年比+2.8%、2025年は同+2.3%を見込んでいます。

 

[図表1]米国の実質GDP成長率の予想

 

物価の先行きについては、次期トランプ政権の行き過ぎた政策によるインフレ圧力の高まりが、大きなリスクになると考えます。焦点は関税の引き上げですが、引き上げは中国に対して行われる(2025年7-9月期に現在の平均20%を40%へ引き上げ)ものの、全輸入品への関税引き上げは、各国との個別交渉になると想定しています。物価上昇率の四半期予想は図表2の通りで、2024年は前年比+2.8%、2025年は同+2.4%を見込んでいます。

 

[図表2]米国の物価上昇率の予想

利下げは来年3月から半年毎25bp、4回で終了、今回関税引き上げは慎重な判断がなされよう

金融政策について、弊社はFRBが2025年3月と9月、2026年3月と9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、25bpずつ4回の利下げを行い、FF金利の誘導目標が3.25%~3.50%に達したところで利下げは終了と予想しています。従来は2025年に25bpの利下げ4回で終了とみていましたが、次期トランプ政権による政策の不確実性に備え、今般、利下げペースを四半期毎から半年毎に修正しました。

 

2025年の米国経済を見通す上では、前述の通り、次期トランプ政権の行き過ぎた政策には注意が必要です。仮に、関税の引き上げが積極的に行われれば、米国内のインフレ圧力が高まり、FRBの政策判断にも影響が及ぶと思われます。ただ、トランプ氏にとってインフレ批判は大統領選の勝因の1つであり、関税の引き上げは前回よりも慎重な判断がなされる可能性が高いと考えています。

 

 

(2024年12月24日)

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「2025年の米国経済」見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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