医師の人数が多ければいいわけではない
クリニックのコンセプトは3つに大別されます。
1つ目は医師1人体制で1人ひとりの患者さんとの絆を大切に、身を粉にして働くのか。2つ目は資本のあるグループのオーナーが運営する医院で「雇われ院長」になるのか。3つ目は一般の外来診療で開業し、プラスアルファで在宅患者さんを10~20人と診ていくのか。
複数人の医師で開業するのであれば、医師もどんどん増やすことで、きちんと休みを取りつつ、患者さんを診ることができるわけです。しかし、あまりに大人数になってくると、やはり多くの人たちをまとめていく難しさが出てきます。
もちろん、人数が多いとまとめる難しさはあるものの、楽しみもあります。これは私が日々チームで訪問診療を行うことで感じている点です。ある程度の人数で、そこで共通の理念や価値観、あるいはミッションなどを共有し、みんなで協力しながら仕事をするということは、自分たちの生活にも張り合いが出て、生き生きと働くことができます。
それが患者さんの療養生活の充実にもつながっているのではないかと考えています。
個人宅か施設かでコンセプトが変わってくる
個人宅の患者さんを中心とするのか、あるいは施設の患者さんを主体にするのか、という点でもコンセプトは異なってきます。
個人宅も施設もそれぞれメリット・デメリットがありますので、どちらを主体にするのか、ということを計画段階からきちんと固めておく必要があります。
もし、1人で訪問診療をしている方が病に倒れた場合や医師を引退するということになった場合、引き継げるような体制をあらかじめ作っておくべきでしょう。
1人で開業する場合は、ほとんどの方が個人事業として開業することを選ばれるかと思います。個人事業の場合は、事業主である医師が亡くなる、または引退すると、そのまま事業は解散となり、引き継ぐことはできません。
また、事業規模が大きくなるにつれて、医療法人や一般社団法人に法人化することを選ぶかたもいらっしゃいます。その際には、開業した医師が理事長になることがほとんどかと思います。しかし、その方がもし引退したり、もしものことがあったりした場合は、違う人に理事長を引き継いでもらうことができれば、クリニックとしては存続していくことになります。
そう考えると、法人化した方が事業承継するのが容易なように思えますが、デメリットもあります。もし後継者が見つからず、法人が解散ということになると、法人の持ち物はすべて国庫に帰属、つまり国のものとなってしまいます。
そのため、もし自身の持っているクリニックの土地や建物を個人の持ち物として維持したい、お子さんが医師ではないため、後継者にはなれないというような方の場合は、個人事業として継続していくことをおすすめします。
野末 睦
医師、医療法人 あい友会 理事長