(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍で一時落ち込んだ訪日外国人数ですが、円安の影響もあって現在は順調に回復。日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2024年の11月までの累計は3,337万9,900人と過去最多を記録し、目標とする2030年の訪日外国人数6,000万人に向けて増え続けています。一方で、東京や京都、大阪など大都市圏への集中や、オーバーツーリズムの問題も指摘されており、今後は地方へのさらなる送客による訪日外国人の分散が不可欠とみられています。実際京都では、急増する訪日外国人への対応が困難となり、老舗のお店が惜しまれつつも廃業を選択せざるを得ないといった事例も見受けられます。急増する訪日外国人への対応に必要なのは、「来てもらい、満足してもらい、再訪してもらう」街づくり。本記事では、すでに魅力ある観光地として多くの外国人客を惹きつけている岐阜県高山市の事例から、訪日客増加に伴う課題と今後の展望について考えていきます。

英語でのコミュニケーション

多くの中学生、高校生の目標に…30年以上続く「英語スピーチコンテスト」

そんな高山市の国際交流に取り組む姿勢は、30年以上続いている「英語スピーチコンテスト」にもみることができます。飛騨高山国際協会が主催する中学生、高校生を中心に市民から希望者を募って行う年に1度のコンテスト。学生上位者を海外都市へ派遣する取り組みで、今年は米国デンバー市へ派遣し、学生らは現地の高校生との交流やホームステイを体験しました。

 

「これまでに多くの子どもたちを海外に派遣し、異文化に触れてもらいました。『ここで英語に目覚めた』という学生もいます。また、小学生が登校途中に外国人観光客に普通に朝の挨拶を行ったり、学校の授業で外国人のインタビューを行ったりする機会をつくれることは、とても恵まれていますよね」

 

学生たちが英語を身近に感じやすい環境を作り上げてきたことは、国際交流の意識を醸成する重要な取り組みのひとつといえそうです。

 

地元の居酒屋や朝市でも英語でやりとり

こうした英語に対する取り組みや観光客を歓迎したいマインドは、居酒屋や有名な朝市でも見ることができます。

 

宮川朝市((飛騨高山旅ガイド フォトライブラリーより))
宮川朝市(飛騨高山旅ガイド フォトライブラリーより)

「多くの観光客が訪れる時期は居酒屋も満席で、ひっきりなしにお客さんが来ます。そんなとき、外国人観光客の方が来られると、店のご主人は英語で『ごめんなさい、席がいっぱいだから入れません』と説明するんです。また、朝市でも売り手のおかあさんが英語で『全部でいくらですよ』と説明していますね。高山では、そんなふうにお店の人たちが外国人観光客の方とコミュニケーションを取って商売しているんです」

相談窓口で医療機関の負担を軽減

さらに、高山市が外国人観光客が滞在しやすい環境をつくるために取り組んでいる「ワンストップ受診相談窓口(高山QQ(救急)フォン)」も注目したい施策です。これは高山市を訪れる外国人観光客がけがや病気などをした際に観光施設、宿泊施設などから24時間、受診に関する問い合わせができる相談窓口として設置したもの。

 

「相談窓口は、観光関連施設と医療機関のあいだに立って外国人の受入が可能な医療機関や薬局を紹介したり、診療にかかる費用など医療制度の質問について説明を行ったりするなどしています。外国人患者にひっ迫する市内医療機関からの声を聞いて設けた相談窓口で、病院側の負担を軽減する効果があると考えています」

 

外国人観光客にとって心強い仕組みであるとともに、医療機関の負担軽減にも役立つ取り組みとなっているようです。

 

豊富な観光資源と高い国際度を武器に、魅力ある観光地づくりを進める高山市。「TAKAYAMA STYLE(仮称)」をはじめ、予定しているさまざまなインバウンドへの取り組みは来年以降に実を結ぶことが期待されており、その成果によっては、オーバーツーリズム問題に悩むほかの観光地にとって、高山市がひとつのモデルとなるかもしれません。高山市の事例が国内のインバウンドにおける問題を解消する手掛かりとなるか、注目を集めそうです。

 

古い町並(飛騨高山旅ガイド フォトライブラリーより)
古い町並(飛騨高山旅ガイド フォトライブラリーより)

 

※この記事は、THE GOLD ONLINEとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。

 

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