(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍で一時落ち込んだ訪日外国人数ですが、円安の影響もあって現在は順調に回復。日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2024年の11月までの累計は3,337万9,900人と過去最多を記録し、目標とする2030年の訪日外国人数6,000万人に向けて増え続けています。一方で、東京や京都、大阪など大都市圏への集中や、オーバーツーリズムの問題も指摘されており、今後は地方へのさらなる送客による訪日外国人の分散が不可欠とみられています。実際京都では、急増する訪日外国人への対応が困難となり、老舗のお店が惜しまれつつも廃業を選択せざるを得ないといった事例も見受けられます。急増する訪日外国人への対応に必要なのは、「来てもらい、満足してもらい、再訪してもらう」街づくり。本記事では、すでに魅力ある観光地として多くの外国人客を惹きつけている岐阜県高山市の事例から、訪日客増加に伴う課題と今後の展望について考えていきます。

オーバーツーリズムの未然防止対策に取り組む

高山市・市長公室東京事務所の永田友和所長
高山市・市長公室東京事務所 永田友和所長

ただ、そんな高山市も「観光に対する住民意識の乖離」に強い危機感を覚えています。

 

高山市・市長公室東京事務所の永田友和所長によると、「市内において住民生活に大きく影響するようなオーバーツーリズムの問題は起きていないと考えていますが、そうならないような未然防止対策は必要でしょう。『住んでよし、訪れてよし』の持続可能な地域の実現を目指しており、そのためには、住民の方からの理解が大切です」といいます。

 

高山市では、観光庁の「持続可能な推進モデル事業」のモデル地区に指定されています。その事業を活用して、令和5年度に実施した市民アンケートでは、外国人観光客の急回復に伴うマナー問題や、交通渋滞などの課題が明らかになったとしています。

 

「外国人観光客それぞれが持つ文化・風習の違いも要因の一つと考えられますが、ごみの捨て方や信号無視、自転車の乗り方が危険であるなどの声も寄せられています」

 

そこで同市では、滞在中のマナー、ルール遵守を観光客に周知するための方策として、高山旅行で求められる旅行スタイル「TAKAYAMA STYLE(仮称)」の提唱を計画。「TAKAYAMA STYLE(仮称)」は、高山の美しい町並や自然が地域の住民によってしっかりと守り伝えられたことを理解いただき、観光客も一緒になって守っていただく、楽しんでいただきたいという思いを伝え、それによりマナーやルールに関する理解も深まることを期待しているとのこと。

 

永田氏は「高山は広いので、混雑を緩和し、観光客の回遊性を高めるためにも、中心部だけでなく、ぜひ観光客の方に訪れてもらいたい、素晴らしい観光スポットがたくさんあることをしっかり情報発信していきたいと思っています」といい、情報発信力を強化して観光客を分散させる構想を明かします。「特定エリアへの観光客の集中」という日本全体でみられる現象は、高山市内でも起きているようです。この問題は、地域の観光スポットや二次交通情報(周遊バスの利用促進等)の発信を強化することでの解消を見込んでいます。

積み上げてきた国際感覚が強みに

訪日客の増加に伴うオーバーツーリズムの問題は、いまや国内全体の課題です。地元住民と観光事業者とのあいだでインバウンドに対する意識の乖離が出る懸念について、永田氏は「やはり『観光が住民生活にも寄与している』と思ってもらうことが大事。観光は、裾野が広い分野ですので、観光業だけが潤うわけではなく、そこからさまざまな形に派生することが、市民生活にいい影響を与えるのだと思ってもらえるように丁寧に説明していく必要があります」と話します。

 

ただ、もともと高山市は山の中にあるという地理的な特徴から、住民に「観光客をもてなそう」というマインドが根付いているようです。「来にくい場所なので『しっかり歓迎したい』という思いは、昔からずっとあると思います」と永田氏。さらに、前述の昔から国際交流を進めてきたという背景も、外国人観光客を迎え入れるうえでプラスに働いているといいます。

 

「高山がほかの地域よりも恵まれていると思うのは、長い間、国際交流などに取り組んできたこと。訪日観光客の方とは言語も商習慣も生活も違いますが、住民はそこに対して相手の気持ちを考えて理解する気持ちがある。それはこれまでに積み上げてきたもので、高山の強みのひとつでもあるのかなと。また、市民にはなんとなく『海外の都市と姉妹都市になっている』という意識があるのでは。『世界各地とつながっている』という意識を持つことは大事だと思います」

 

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