米金利の見通し…来年1月までは大きく動かない
まじめにいえば、米10年国債利回りは来年1月くらいまでは「3.5~4.5%あたり」とみています。新政権関連や経済指標、金融政策などで動くでしょうが、このレンジを抜くような出来事はなさそうです。
米金利が大きくは動かないのならば、日銀がどれくらいアグレッシブに金融引き締めのスタンスを出すかが(投機の動向にとっても)大事ですが、先週末の植田総裁のインタビューをみる限り、慎重に思えます。日銀は、投機を絶やさないよう、各方面と調整しつつ政策を進めているのかもしれません。
日銀の引き締めや円金利の上昇は、ある程度は許容されるものの、国際的な投資家のみならず、米国にとっても不都合であることを考えておくべきでしょう。
年末にかけて発生する「金利急上昇リスク」
2019年の秋と同様、年末にかけて、「レポ金利」と呼ばれる、金融市場でも最も重要な金利が急上昇するリスクがあります。
結論を先取りすれば、「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)の残高減少」と同様、おそらくは、米連邦準備制度理事会(FRB)による資金供給やミニQE(量的金融緩和)によって、「先送りにされ、なにも問題はないふりがなされる」(Extend and Pretend)でしょう。
レポ市場で資金需給がひっ迫するワケ
レポ市場で資金需給が引き締まっている背景を考えてみましょう。多くの人は、その理由として、量的金融引き締め(QT)による余剰資金の減少を挙げます。
他方で、筆者は、米国債の発行増加と保有主体の偏在(金融機関のバランスシートの制約や、投資家の選好)を問題の本質と捉えています。
なぜなら、「いくら米国債の発行が増えても、あるいは、いくらQTによる米国債の供給が増えても、供給される米国債はすべて市場で吸収できる(そのための資金は存在する)ため」です。問題は「米国債を買いたいか、あるいは、米国債を保有することに制約があるか」です。
財政赤字の下で、米国債が発行されるケースは次の3つです。
1.社会保障支出や軍事支出など、新規の財政支出を実行する
2.既発債の満期償還にあたり、借り換えを行う(⇒財政赤字ゆえ、償還される米国債の元本を支払う財源はなく、新規の米国債発行で賄う必要がある)
3.既発債の利払いを行う(⇒財政赤字ゆえ、米国債の利金を支払う財源はなく、新規の米国債発行で賄う必要がある)
それぞれを考えると、銀行が米国債を買う(あるいは、銀行がレポを通じて、証券会社やヘッジファンドに米国債を買うための資金を貸し付ける)限り、
1.【財政支出の場合】:新規の米国債発行金額と同額の顧客預金の増加が生じる(⇒銀行のバランスシート:【資産】米国債、【負債】顧客預金;次節で補足)
2.【既発償還債の借り換えの場合】:借り換えのための新規の米国債発行金額と同額の償還金が供給される(⇒銀行のバランスシート:【資産】の米国債が償還され、新しい米国債に置き換わる;同上)
3.【既発債の利払い】:利払いのための新規の米国債発行金額と同額の利金が支払われる(⇒銀行のバランスシート:【資産】米国債、【負債・利益】受取利息)
ことになりますから、「米国債を買うお金がない!」といった事態は生じません。