シニアタウンへの住替えはどうか?
それから半年たち、和彦さんから再び相談がありました。息子と相談した結果、いろいろなサービスが利用できる「シニアタウン」に住み替えようと思うがどう思うか、という内容のものでした。
分譲マンションで、50歳の息子と同居することも問題なく、また、食事を作らなくても利用できるサービスや、掃除を依頼できるなど、楽に生活できそうだといいます。
70代の和彦さんですが、健康状態は問題なく、いまから介護施設や老人ホームに入る状況ではないため、シニアマンションという選択肢はぴったりではないかとすすめました。これでいよいよ和彦さんも、自宅の住み替えを決断できたのでした。
シニアタウンとは?
シニアタウンとは、アメリカのモデルケースを日本に導入したもので、「コミュニティ施設」を備えた「分譲マンション」が基本形です。
もう少し詳しく説明すると、高齢者が健康なうちに入居し、終身で過ごすことが可能な生活共同体をCCRC(Continuing Care Retirement Community)と言い、充実した生活を送ることで健康を維持する「アクティブシニアタウン」と言い換えることもできます。この集合住宅の考え方は、1970年代のアメリカで始まりました。
その最大の特徴は、入居者がすべてシニアであり、なおかつ元気で充実した生活をしていること。健康な食事、充実したアクティビティと、趣味仲間がいるコミュニティだからこそ可能な、理想的な共同体だとされています。
老人ホームとの大きな違いは、入居時の状況です。一般的に老人ホームは健康に不安を抱えた時に入居する傾向がありますが、CCRCは健康には問題のない方々がセカンドライフを楽しむために入居します。
健康ではあるけれど、一人ではできないことを楽しみたい、栄養バランスのとれた食事や仲間との生活に刺激を受け、この健康をもっと長く維持していきたい。そういった要望に応えることができるのが、CCRCです。アメリカでは既に2,000を超える施設がほぼ各州にあるなど広く根付いた考え方であり、多くの人たちがCCRCでシニアライフを謳歌しています。
戸建てからマンションに住み替えるメリットは?
妻を亡くし、独身の息子と二人暮らしをしている70代男性が、ケア付きマンションに住み替えるメリットはいくつか考えられます。主なものをあげてみましょう。
1. 健康と介護のサポート
年齢とともに、健康や日常生活の維持が難しくなるでしょう。ケア付きマンションでは、介護サービスや医療サポートが提供されるため、安心して生活を続けることができ、その点が大きな魅力となります。特に、妻を亡くした後は、精神的・身体的にサポートが必要になる場合もあります。
2. 息子の負担軽減
独身の息子と二人暮らしだと、息子が父親の介護やサポートを担う負担が大きくなりがちです。ケア付きマンションに住むことで、息子の負担を軽減し、父親もプロのケアを受けられる環境に移行できます。
3. 安心できる生活環境
高齢になると、家事や掃除、買い物などの日常的なタスクが難しくなることがあります。ケア付きマンションでは、これらの日常のサポートを受けられるため、安全かつ快適に生活を送ることができます。
4. 孤立防止と社会的交流
高齢者が一人暮らしや少人数での生活を続けると、社会的なつながりが減少し、孤立しやすくなります。ケア付きマンションでは、他の住人やスタッフとの交流の機会があり、孤独感を軽減し、精神的な安定を保つことができます。
5. 住環境のバリアフリー化
高齢になると、階段や段差などが事故やけがの原因になる可能性があります。ケア付きマンションはバリアフリー設計がされていることが多く、安全に生活を送ることができます。