(※写真はイメージです/PIXTA)

相続税の税務調査で税務署から指摘されることが多い現金や預貯金ですが、そのなかでも申告漏れの財産として特に多いとされるのが、名義人と預金者が別である「名義預金」です。名義預金とみなされると、子や孫へあげたいと思っていた財産が、被相続人の財産として相続税の課税対象となってしまうので、注意しなければなりません。本記事では、税務調査で名義預金とみなされるケースや対処法について税理士松本が解説します。

「名義預金」とは

そもそも名義預金とは、実際のお金の所有者と口座の名義人が異なる預金を指します。

 

例えば、祖父母が孫名義の口座を作って預金をしていたり、専業主婦(夫)が配偶者の収入を自身の名義で預金していたりするなどのよくあるケースが名義預金と呼ばれるものです。

 

法律上、名義預金という定義はありません。名義預金の財産の所有者は名義人ではなく、亡くなった人の財産であるため、相続税の課税対象となります。

名義預金は税務調査でバレやすい

名義預金は被相続人とは違う名義預金であるため、「税務調査が入ってもバレないだろう」と無申告にするケースが多いです。

 

しかし、相続税の税務調査においては、名義預金を重点的にチェックするため、名義預金の存在は高確率でバレてしまいます。

 

なぜなら、相続税の税務調査では被相続人だけでなく、相続人の預金口座も調査対象となるほか、税務署はKSKシステム(国税総合管理システム)によって被相続人や相続人のある程度の収入が把握でき、収入に対して預金額が多ければ名義預金を疑うからです。

 

名義預金とみなされるケース

自分以外の家族名義で作った口座が名義預金に当てはまるのか、気になる人は多いでしょう。

税務署に指摘されやすい名義預金の主な判断基準は以下のとおりです。

 

  • 預金の資金源(原資)が誰か
  • 名義人が預金の存在を知っていたか
  • 名義人が贈与を受けたという認識があるか
  • 預金の管理・運用をしていたのは誰か

 

これらを踏まえ、名義預金とみなされやすいケースについて詳しく説明していきます。

 

名義人に収入がない

名義預金かどうかを判定する過程において、重要視されるのは原資の出どころです。例えば、配偶者が自身が働いた分の収入を配偶者名義の口座に貯めていた場合、その預金は配偶者固有の財産となるため、相続税の課税対象とはなりません。

 

しかし、配偶者に収入がなく、かつ、相続や贈与も受けていないのにも関わらず配偶者名義の預金が存在する場合、名義預金とみなされることがあります。

 

このように、名義は相続人となっていても、被相続人のお金が原資となっていれば、名義預金認定されやすいのです。

 

名義人が通帳の存在を知らない

口座の名義人が預金の存在を知らない場合、贈与が成立しないため、この預金は被相続人の名義預金とみなされる可能性が高いです。

 

例えば、祖父母が孫名義で預金していても、孫がその預金があることを知らない場合、孫に受贈の意思表示がないと判断され、贈与は成立していないものと見られ、相続税の課税対象となる恐れがあります。

 

この場合、預金管理能力が十分でないため、親や祖父母の判断で本人に口座を管理させず、名義預金となっているケースも多いです。

 

財産が贈与された場合、それを受け取った人が管理・利用できる状態でなければならないため、通帳や印鑑を被相続人が管理していた場合は、「被相続人の財産である」と判断されます。

 

預金を受贈した認識がない

銀行口座の名義人に収入がなくても、贈与として受け取ったお金を預金していることは少なくありません。

 

贈与で受け取ったお金は受贈者の固有財産であり、贈与金額が年間110万円以内の場合は贈与税も非課税となります。

 

しかし、贈与は贈与者と受贈者の双方の合意のもと成立するものであるため、受贈者が財産をもらうことに同意していなければ、その預金は名義預金となり、相続税の課税対象となるので注意が必要です。

 

被相続人が家族名義の口座を勝手に開設し、お金を貯めていた場合がこれに該当します。

 

贈与の記録を残していない

名義人本人の収入などによる預金ではない場合、税務調査で「この預金の原資は何か」と問われることもあるでしょう。

 

その際に、口頭で贈与であると伝えても、税務署側は贈与だと認める可能性は低いです。

 

通帳の記録だけでは、贈与した人とされた人それぞれの意思を確認するのは難しいため、贈与であることの記録を残していないと名義預金とみなされる可能性が高くなります。

 

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