東京の桜開花日が「3月20日以前」だと、景気は拡張局面
1953年から実施されている気象庁の生物観測調査によると、東京の桜の開花日が平年(3月24日)より4日早い「3月20日」以前になった年は、2024年までで12回ある。このうち、コロナ禍でお花見が自粛された2020年を除く11回は、すべて景気の拡張局面に当たる。
早く春が来ると春物衣料商戦が早まるほか、お花見などで外出することが多くなることで、個人消費の底上げが期待できる。お花見の宴会は人々の気分を盛り上げる。厳しい冬の期間が過ぎ、桜の花を愛でて明るい気分になる人は多いだろう。
ただし、開花が遅いからといって景気がよくないとは限らない。1953年に調査を開始して以来、最も遅い開花日となったのは1984年の「4月11日」だったが、85年6月の景気の山まで景気拡張局面が続いた。
開花日は「2月以降の最高気温累計」である程度予測できる
2023年と2024年の最近2年間では、桜の開花時期が対照的だった。2023年は桜の開花が早く、東京の開花日は史上最速タイの3月14日であった。
東京の開花日は、靖国神社の能楽堂の近くにある標本木に5~6輪の花が咲いた日とされる。
2023年は、予測では3月13日に開花するのではないかといわれ、13日当日は各局の取材クルーが標本木の前に集まった。しかし寒冷前線の通過によって午後から気温が下がり、気象庁観測員の13日の発表は「桜の開花は4輪」と、開花日とみなすにはあと1輪足りなかった。結果として、東京の桜の開花宣言は3月14日にズレ込んだ。一方、2024年の東京の桜の開花は3月29日と、平年より遅くなった。
東京の桜は、2月1日以降の最高気温の合計がおおむね600℃に達すると開花する傾向があるといわれる。開花日が「3月14日」と、調査史上最も早かった2020年・2021年・2023年の最高気温累計は各々598.6℃、611.5℃、593.2℃と、おおむね600℃前後だった。開花日が3月20日となった2022年は、開花日までの最高気温の累計は626.6℃であった。
なお、開花日が3月29日だった2024年は、最高気温の開花日までの累計は769.0℃である。2024年は過去の傾向が当てはまらない年だった。
開花日が早いか遅いかで景況感に大きな差
内閣府が毎月25日から月末に実施する『景気ウォッチャー調査』という調査がある。同調査の2023年3月調査結果にて「桜」とコメントしたウォッチャーの景況判断だけから、全体のDIと同様な計算で「桜」関連判断DIを作ると、現状判断DIは72.5、先行き判断DIは75.0と、どちらも50.0を大きく上回った。
この50.0というのは、景気判断の分岐点となる数値だ。判断DI が50を超えれば「景気は上向き」、下回れば「景気は下向き」、50なら「変わらない」と判断したことを意味する。開花日が早かった2023年では、「桜」が景況感に大きくプラスに働いたことがわかる。
一方、開花日が3月29日と遅かった2024年3月の『景気ウォッチャー調査』で「桜」関連判断DIを作ると、現状判断DIは58.3、先行き判断DIは67.9となる。景気判断の分岐点50.0を上回って景気判断にはプラス寄与だが、開花日が「3月14日」と早かった2023年の判断DI (70台)には届かなかった。
「開花日から満開日までの日数」にも注目
東京の開花日から満開日までの日数が長いかどうかも、重要なポイントだ。桜が長く咲いている年は、お花見ムードが続くので好景気が持続しやすい傾向がある。
東京の桜の開花・満開日と景気局面の関係を見ると、開花日が平年と同じか平年より早い年で、かつ「開花日から満開日までが11日以上」だと、景気後退局面ではないという関係がある。
また、開花日から満開日までが11日以上だった11年分すべてで見ると、1981年を除く10年において「景気後退局面ではない」という関係にある。
桜の花を愛でる期間が長いと、明るい気分になる人々が多いと思われる。
宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
ESPフォーキャスト調査委員会 委員 ほか