2024年、東京の梅雨は短かった
気象庁は、令和6年(2024年)の春から夏にかけての天候経過を総合的に検討し、各地方の梅雨入りと梅雨明けの時期を確定、梅雨の時期の降水量を分析した。その結果は次のとおりである。
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〈梅雨入り〉
・かなり遅かった地域……沖縄地方、九州北部地方、四国地方、中国地方、近畿地方、東海地方、関東甲信地方、北陸地方、東北南部
・遅かった地域……………奄美地方、九州南部、東北北部
〈梅雨明け〉
・かなり早かった地域……奄美地方
・早かった地域……………沖縄地方
・遅かった地域……………北陸地方、東北南部、東北北部
〈梅雨の時期*の降水量〉(*6~7月、沖縄と奄美は5~6月)
・かなり多かった地域……縄地地方
・多かった地域……………奄美地方、中国地方、近畿地方、東海地方、関東甲信地方、北陸地方、東北南部、東北北部
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首都東京がある関東甲信地方の梅雨入り・梅雨明けの時期と景気局面の関係を、1951年から2024年の74年間にわたって調べたところ、興味深い結果が得られた。
「梅雨明けの早さ」と景気局面
梅雨の時期の景気局面は、74年間中、梅雨明けが特定できなかった1993年を除く73年間において、拡張局面になった年は49回、後退局面になった年は24回だった。拡張局面であった割合は67%で、後退局面であった割合は33%である。
梅雨明けが早い年は31回あり、拡張局面になった年は25回、後退局面になった年は6回である。拡張局面であった割合は81%、後退局面であった割合は19%で、全期間の平均と比べて景気拡張局面に当たることが多い。
梅雨の時期は雨の日が多く、野外で行う建設工事やレジャーなどの足枷になることが多いと考えられる。梅雨明けが早く、夏が早く来ると、夏物商品が売れ、レジャーへ出かける人が多くなる。これが景気にプラスに働くのであろう。
「梅雨の長さ」と景気局面
次に、梅雨入りと組み合わせて見てみよう。「梅雨入りが遅く、梅雨明けが早い」、結果的に梅雨の期間が短かった年は19回あった。そのうち、拡張局面になった年は15回、後退局面になった年は4回である。拡張局面であった割合は79%、後退局面であった割合は21%と、平均よりも景気拡張局面になる割合が高くなる。梅雨の時期が短いと、景気面で足枷になることが少ないと考えられる。
2024年も梅雨入りは14日遅く、梅雨明けは1日早かった。短い梅雨は景気にとってプラスに働くと考えられ、2024年の梅雨の時期は景気拡張局面だった可能性が大きいと思われる。
一方、梅雨明けが遅い年は35回あった。そのうち、拡張局面になった年は20回、後退局面になった年は15回である。拡張局面であった割合は57%、後退局面であった割合は43%となった。平均よりも景気拡張局面になる割合が低い傾向がある。
梅雨入りと組み合わせてみると、「梅雨入りが遅く、梅雨明けが遅い年」は20回あった。そのうち、拡張局面になった年は14回、後退局面になった年は6回だった。拡張局面であった割合は70%、後退局面であった割合は30%である。平均よりも景気拡張局面になる割合が3ポイントとわずかに高い傾向がある。これは、梅雨入りが遅いため、梅雨の期間が短い年も含まれているからだと思われる。
逆に「梅雨入りが早く、梅雨明けが遅い」、つまり梅雨の期間が明らかに長かった年は12回あった。そのうち、拡張局面になった年は7回、後退局面になった年は5回である。拡張局面であった割合は58%、後退局面であった割合は42%となった。平均よりも景気拡張局面になる確率がかなり低くなる傾向がある。
梅雨の期間が長いことは、景気にマイナスに作用する要素である可能性がありそうだ。

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
ESPフォーキャスト調査委員会 委員 ほか